2014ドラフト候補ランキング〜中国、九州の高校生編・大型捕手に注目が集まる!
今のところ、安樂智大(済美高)のようなずば抜けた存在が見当たらず、来年の中国・九州地区の高校生は不作か…。そんな声もささやかれているが、そんなことはない。中国地区を例にあげると昨年のこの時期、今年のドラフトで巨人3位指名の田口麗斗(広島新庄高)ですら上位候補ではなかったし、夏の甲子園前後に騒がれ、社会人入り予定の山岡泰輔(瀬戸内高)も当時は全国的に知られた存在ではなかった。それだけにこの時期の高校生というのは、実績だけでは語れない難しさがある。逆に考えると、進化を期待できる面白い時期ともいえる。
清水 優心(しみず・ゆうし)
――九州国際大付高<福岡>
―捕手・183センチ87キロ・右投右打
中国から九州を見渡しても、高校入学直後の九州大会から不動の4番捕手を守り続けている清水の存在が際立つ。元々備わっていた力強さに加え、1年時から取り組んでいる柔軟性がうまく融合し、スムーズな上半身と下半身の連動ができるようになった。
今秋は福岡県大会初戦から準々決勝まで5試合で4本塁打を放り込んでおり、九州大会を懸けた大一番を前に他校の警戒はピークを迎えていたほどだ。中でも機動力でかき回された飯塚高戦で、場外へ消えていった満塁弾は圧巻だった。守りで揺さぶりをかけられても一切動揺せずに、逆にトドメを刺した勝負根性はまさにプロ向きといえる。
そして何より、捕手としての座った時の雰囲気がいい。スケールが大きく、打てるし、守れる。ここまで総合力を備えた高校生捕手はめったにいない。
柳川 健大(やながわ・けんた)
――岩国高<山口>
―投手・184センチ70キロ・右投右打
神宮大会では沖縄尚学高に大敗を喫したが、センスと鋭い洞察力を併せ持ち、状況に応じた投球ができる逸材右腕だ。秋季中国大会では、ボール球になる低めの変化球を見極めようとした倉敷商高から13奪三振。さらに連投となった決勝では、打たせて取る見事なギアチェンジで広島新庄高を退け、中国大会を制した。
旧チームまでは野手としての出番が多かったが、「実はその間、投手としてじっくりと育てた」(河口雅雄監督)というように今まさに伸び盛り。身長も夏から約3カ月で約2センチ伸びており、球速もまだまだ増しそうだ。試合を楽しむことができるし、要所で強気なところもいい。
本人曰く、田中将大(楽天)をイメージしているというが、加えて岩隈久志(マリナーズ)のようなしなやかさが出てきたら、より面白いかも知れない。
善 武士(ぜん・たけし)
――多良木高<熊本>
―投手・178センチ70キロ・右投右打
「野田の再来か!?」
熊本県南東端に位置する山あいの多良木町からは、いつしかそんな声が聞こえるようになった。阪神、オリックスで活躍し1試合19奪三振の日本記録を持つ野田浩司氏を多良木高校時代に育てたのが、現在も指揮をとる齋藤健二郎監督だ。約30年を経て、再び同じ土壌で剛腕が育っている。
1年夏に140キロ台を連発して鮮烈なデビューを果たすと、本人が「Vスラ」というタテのスライダーに強弱をつけ、試合を重ねることにメリハリのある投球ができるようになった。
今秋、熊本県大会準々決勝の秀岳館高戦では、足をつりながらも延長14回を投げ抜き、19奪三振で完封。そんな勝負根性からも、マウンド上からみえる景色が変わってきたことがうかがえる。
<次点となる候補選手>
今秋、成績的には好対照となった中国地区の左右両輪にも熱い視線が注がれている。中国大会準Vの143キロ左腕・山岡就也(広島新庄高)は、クロスファイアーからググッとくるような球筋が最大の魅力で、本来の調子が戻れば、さらに存在感が増すはず。一方、島根県大会2回戦で敗退した恩田和季(開星高)は、ここへきて増速とともにタテスライダーのスピンが増しており、来春の快投が待ち遠しい。
▲山岡就也(広島新庄高)
さらに打の成長が著しい強肩捕手・頓宮裕真(岡山理大付高)、九州では、投打両面でスター性を秘める小野郁(西日本短大付高)や長身から急降下するような角度の球筋を持ちながら抜群の制球力を誇る諸富将士(城北高)など、それぞれの持ち味にも期待が高まる。
まだ際立った存在ではないが、187センチ右腕・末永海人(創志学園高)の投げっぷりも実にいい。突如、制球力を乱す悪い癖もあるが、ハマった時のストレートはモノが違う。本人も「思い切って腕を振った時の方がいい」というだけに、あとは柔軟性が出てくれば、安定感も出てくるだろうし、大化けするという意味では面白い存在だ。
▲末永海人(創志学園高)
■プロフィール
アストロ/1973年生まれ、徳島県出身。熊本を根城とし、九州全域はもとより中国、四国地区まで渡り歩き有望選手を探す。大学時代は軟式野球部の監督兼選手として全国準V。