統一球問題と後半戦の展望〜ロッテ、西武、中日の後半戦に注目!
【日本は「日本の野球」にあわせたボールを】
少しさかのぼりますが、統一球問題について少し話させてください。ボールの話になるとホームランバッターにばかり注目が集まります。でも、僕らのような中距離ヒッターにも影響はあります。間を抜ける打球スピードも変わりますからね。
2年前くらいの一番飛ばなかった時は、ホームランバッターだけじゃなく、打者はみんな成績を落としましたよね。ピッチャーもどんどんストライクで勝負にくるし。バッターって、飛ぶ・飛ばないの問題だけじゃなく、力負けしたらいかんと思ってちょっとでも力むと、そこでバランスが崩れてしまいますから。
僕の場合、左中間や右中間に強い打球が打てるかどうか、っていうのが調子のバロメーターでもありました。体がそんなに大きくなかったのもあって、ホームランバッターではなかったですけど、決して当てるだけのバッティングはしませんでした。結果的にはそれで二塁打が多くなったんじゃないかなと思っています。
統一球に話を戻すと、そもそも僕の現役時代は球場ごとにボールが違うこともありました。でも、そのような環境だったので、逆にボールのことは、ほとんど気にしてませんでしたよね。
それが「飛ばないボール」に統一されたとたん、毎日1-0とか2-1とか、ロースコアでいつも同じ展開になってしまった。お客さんも同じ展開ばかりだと飽きてしまうと思うんですよね。だから、何事も適度がいいですよね。
それと、統一球っていってもアメリカで試合するのは4年に1回ですし、そこにあわせるのは何も意味がないと思いますね。現に、アメリカのメジャーリーガーも日本に来ると「日本のボールはなんて投げやすいんだ!」と言ってるわけですから。
メジャーリーグでは、ボールが滑りすぎて危ないからと松ヤニをつけて投げるピッチャーも出てくるわけです。バッターの方も、抜け球で当てられるくらいなら松ヤニをつけてくれたほうがいい、という暗黙の了解でやっているわけですし。そんなボールを使うのはおかしいですよね。日本は「日本の野球」なんだから、アメリカにあわせる必要は何もないと思います。
【もっと色んな変化が必要】
日本のプロ野球も守るべきところは守り、でも変える必要があるのであればいろいろ検討していくべきですよね。今年も交流戦が終わりましたけど、丸々1カ月間というのは長いと思うんです。例えばですけど、一気にやるのではなく、夏場以降にも分散して開催することだって考えられます。交流戦も始まってもう結構な年月が経っているので、色んな変化が必要なんじゃないかと思いますね。
そして、この週末からは通常のリーグ戦に戻っていますので最後に今後の展望を少しだけ。
まずパ・リーグは、交流戦でもよかったオリックスとソフトバンクを中心にこのまま進むでしょう。オリックスはペーニャ選手が入ったことで打線が安定しました。先発陣もいいし、後ろも安定してますからね。あとは、西武が本来もっと力のあるチームなので、終盤にかけてどれくらい上がってこれるのかな? という部分が気になります。そして、何気に鍵を握りそうなのかロッテでしょうね。チームのバランスがとてもいい。目先で勝った負けた、と星勘定するのではなく、長い目で見ると気がついたら、上がっていく可能性を秘めたチームじゃないかなと思いますね。
一方のセ・リーグは、開幕前は巨人が断トツだろうということでしたけど、予想以上にピッチャーが崩れてしまって、結局、安定しているのは先発では菅野智之投手くらい。後ろもバタバタしていたことで、そこまで差がついていません。逆に阪神は意外と投手がそろってきたので、広島、巨人、阪神の3チームに中日がどこまで食い込めるか? という展開でしょうね。
【先発ピッチャーが9割占めている】
まぁ、でもいくら予想しても、選手には好不調があったり、ケガ人が出たりと色々なことがあって、計算が成り立たないのが野球の難しいところであり、おもしろいところだと思います。ただ自分から見て思うのは、ピッチャーがしっかりしているところはチームの成績も安定しているなぁ、ということ。これはもう間違いないですよね。野球ってやっぱり先発ピッチャーが8割、9割占めていると思うので。
じゃあ、先発ピッチャーのコマはどこがそろっているかといえば、広島と阪神。ただ中日も濱田達郎投手が出てきて、これで吉見一起投手が戻ってくれば……というところで期待したくはなりますけど、とにもかくにもピッチャーでしょうね。
やっぱり、「今日こいつが投げるんならいける!」と野手にも思わせるピッチャーが1人、2人いるチームは強いですよ。そうやって野手に信頼されたら点も入りますし。今ならオリックスの金子千尋投手とか、僕が現役のときの中日であれば川上憲伸投手が投げるときとかね。何よりも守っている時間が短いでしょ。そりゃあリズムが良くなるし、何よりもラクですよね。
ただ、そんなピッチャーが6人もそろうことはないわけです。その証拠に、どのチームも今年は点をたくさん取れてますからね。そこに、付け入る隙があるんじゃないでしょうか。
立浪和義(たつなみ・かずよし)
1969(昭和44)年8月19日生まれ、大阪府摂津市出身。PL学園高〜中日。PL学園高では1年秋からショートのレギュラーを獲得。3年時は主将として甲子園春夏連覇を果たした。中日からドラフト1位指名を受け、1988年に入団。1年目の開幕戦に、高卒ルーキーながら2番・遊撃手で先発出場した。同年に新人王と高卒ルーキー初のゴールデングラブ賞を受賞。さまざまな打順、守備位置を経験し、2003年に2000本安打を達成。2009年に引退するまで、生涯中日を貫いた。通算487二塁打はNPB記録で、プロ生活初安打も、最後の安打も二塁打だった。引退後は解説者を務めるとともに、2012年秋から2013年春のWBCまで日本代表の打撃コーチを務めた。
【構成=オグマナオト】