野球と俳優の“二刀流”!? アマチュア野球人気を支えるイケメン選手・曹佑寧を発見
☆台湾の大学生はすでに実力も人気も併せ持っていた
NPBチームとの初対戦で早速金星を挙げた大学生中心の代表チーム「中華培訓(中華隊)」。初出場となる今回のアジアウインターリーグでは、日・韓・台のプロリーグの若手選手相手に開幕からずっと首位争いを繰り広げるだけでなく、プレーオフでも韓国、日本に打ち勝ち、優勝まで上り詰めた。
ウインターリーグ開催中、数は少ないながらも、連日この「中華隊」の雄姿を一目見ようとファンが球場にやってきた。台湾ではプロアマ問わず、代表チームの人気は絶大である。国際大会で負けようものなら「強化費を惜しんだ」と政府までもが非難の的になるほどだ。
特に今回の「中華隊」は若い選手が集まっているだけあって、女性ファンを虜にしている。そんな代表チームの不動のトップバッターを務めるのがこの選手。
野球ファンならどこかで見たことのある人も多いのではないだろうか?
☆投手役の俳優? いえいえ、ドラフト候補の外野手です
そう、今年日本でも公開された野球映画『KANO』の主人公を演じた、曹佑寧(ツァオ・ユーニン)だ。映画では少々ぎこちないフォームが印象に残る投手として登場していたが、ぎこちなかったのはそれもそのはず、彼の本職は外野手だから。
その彼が、主人公である呉明捷(ゴ・メイショウ)役に抜擢された理由は大きな要因は「イケメンだから」。プレーシーンのぎこちなさがとやかく言われる野球映画だが、野球がうまく、かつ爽やかな男前というのは、世界広しと言えどもそうそうはいない。『KANO』のプロデューサーや監督も、顔や体のスタイルといった外見の印象を特に重要視してキャスティングしたと語っている。
ガタイのいい選手に交じる華奢な彼の姿は、チームの中でもひときわ際立つ。プロ野球選手に交じってジャニーズのタレントがプレーしているような錯覚さえ起こしてしまう。しかし、彼の打力は折り紙付きで、犠牲フライのほしい場面ではしっかり外野に打球を放ち、NPBの投手相手にも振り遅れることなく安打を放ち、また全力疾走でエラーを誘い、エンドランも決めていた。2014年秋に開催された21Uワールドカップでは、現役大学生ながら代表入りし、ベストナインを獲得。その実績通り、グラウンド上では一味違うプレーぶりを見せていた。
まさに「爽やかすぎるイケメン野球選手」。
映画『KANO』の呉明捷をそのまま現実のフィールドに連れてきたようだ。昭和チックな汗臭さの漂うチームにあって、より一層の輝きを放っている。「体育会」臭さはみじんも感じられない。
☆曹佑寧は台湾球界の救世主となれるか?
現在、台湾の野球ファンの目は日本に向いている。このアジアウインターリーグでも、球場にやってくるファンの多くは、NPB球団のユニフォームを身にまとい、日本語で選手を応援していた。その数は国内リーグ・CPBLの球団のユニフォーム姿よりはるかに多かった。野球の人気が出るのはいいが、やはり国内リーグの方にも目を向けてほしいのが、CPBLの本音だろう。そういう状況下において、彼の存在は台湾プロ野球の救世主になる可能性を持っている。
映画の撮影時に大学1年だった彼は現在4年生。2016年6月には卒業を迎える。
「本人はプロに行くって言ってますけど、まぁ……今後次第だね」
と代表チームを率いる郭李建夫監督は言う。しかし、今回のプレーぶりを見る分には、十分にプロでもやっていける。本当にプロへ進むなら、実力も人気もすでに併せ持つ曹佑寧がドラフトの目玉になるのは間違いない。以前に「芸能活動も機会があればやってみたい」と語ることはあったが、第一にあるのは野球であることは今も変わっていない。
若年層が国際大会で好結果を出し、プロもアマも野球の人気も少しずつ回復してきた。このいい流れをさらに加速させるように、曹佑寧が台湾プロ野球リーグ・CPBLに入り、さらに盛り上げていってほしい。
文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)