新人王最右翼と言われながら苦汁をなめた1年目…鬼気迫る眼光で逆襲だ!・東浜巨
【君はこんなもんじゃない選手名鑑2014】
☆“鬼気迫るお寺の小僧”だった亜細亜大時代
沖縄尚学高時代の2008年に春のセンバツで優勝投手となり、その年はプロ志望届を提出せず亜細亜大へ進学。翌2009年の春の東都大学リーグ戦でデビューから3試合連続完封勝利に始まり、大学通算22完封という未踏の記録を樹立した東浜巨。
万全のコンディションであれば150キロを超えるストレートも投げるが、それは必要なときだけ。スライダー系の球種とツーシームを基本に、時折バッターの気勢を削ぐスローカーブを入れる巧みな投球術と、ボールが先行しようが塁上に走者が溜まろうが、決して物怖じしない強い精神力が当時から東浜が持つ最大の持ち味である。
さらに、1年生の頃から、上級生も含む内野陣に良い意味の「上から目線」で声をかけるのも特徴の一つ。坊主頭にクリっとした目は愛らしさのある風貌だが、いざ打者に向かうと鋭い眼光で東都の猛者をも凍りつかせる迫力があり、“鬼気迫るお寺の小僧”というのが実際の姿であった。
☆期待を大きく裏切ったプロ1年目
2012年秋のドラフトで3球団による競合の末に入団したソフトバンクでの1年目は、その期待を大きく裏切る3勝1敗にとどまった。オープン戦ではまずまずの結果を出しながら、豊富な先発陣に食い込めず開幕1軍を逃し、ファームでの登板を経て、1軍に上がってきたのは4月11日のオリックス戦。だが、記念すべきプロ入り初登板は4回途中で6失点。さらに18日の楽天戦でも5回6失点でプロ初の敗戦投手となり、再びファームへ。
だが、ひと夏越えて再昇格した9月23日の登板でようやくプロ初勝利を挙げると、その後は中5日の間隔をきっちり取って3連勝でシーズンを終えた。
☆2ケタ勝利どころか球界トップクラスの活躍を確信
2014年は、東浜が「こんなもんじゃない」活躍を間違いなくするだろう。その根拠は、すでにいくつかある。
ひとつは、2013年最後の登板となった10月5日の日本ハム戦。シーズンの目的を失っていた日本ハムが相手とはいえ、10奪三振、被安打4でプロ初完投・初完封を挙げている。このとき、何より素晴らしかったのは、大学時代の好調時に見られた、飛び跳ねるような躍動感が復活していたことだ。また、開幕直後はよそ行き仕様に見えたマウンドでのしぐさも様変わりし、大学時代の「上から目線」で内野に合図を送る姿も見られた。
加えて、シーズン終了後には、武者修行としてプエルトリコのウインターリーグに参加し、8試合で4勝1敗を挙げ、自信をつけて帰国していることも好材料である。1年目は「プロでは通用しない」とまで指摘されたとされるツーシームを改良し、その手応えもつかんだようだ。
これだけ条件が揃えば、失敗はありえない。多くの人が「こんなもんじゃない」とは思っているだろうが、そのラインは「2ケタ勝つかどうか」あたりのはず。だが、それすらも「こんなもんじゃなかった」と驚かせるトップクラスの大活躍を確信している。
■ライタープロフィール
キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球のあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。元『野球小増』編集部員で取材経験も豊富。8月には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。