2005年にソフトバンクがホークスの運営母体となって以降の15年間で、日本一に輝くこと6回。これに続くのが、日本ハム、ロッテ、巨人のそれぞれ2回。近年のホークスが、いかに他を圧倒しているかがわかるだろう。
筆者も含めホークスファンはこのところずっと、野球シーズンを最後の最後まで緊張感を持ちつつ、たっぷり楽しめているのである。こんなありがたい話はない。かつて、ダイエー時代後半からソフトバンク初期の王貞治監督時代のころに、クライマックスシリーズ(プレーオフ)で何度も苦杯をなめさせられたことは、もはや遠い昔の話となった。
そんな中でも、2019年はとくに痛快なポストシーズンだった。ペナントレースは、先発、セットアップ、クローザー、中軸打者、助っ人外国人、守備の要と、あらゆる部門の主力選手が入れ代わり立ち代わり戦線離脱。オーダーを組むのも苦労するほどのチーム状態に陥っていた。全143試合に出場した選手は、松田宣浩ただ一人(ちなみに、松田の全試合出場は昨年まで5年連続で、この間148本塁打。声出しも含めて本当に頼りになるチームリーダーだ)。
それでも、代役の選手たちが、チームのほころびを繕うかのようにレギュラー組の復帰までをつなぎ、ペナントレースは2位でフィニッシュ。ただ、決して絶好調のチーム状態でシーズンを終えたわけではない。ラスト3試合は、負け、引き分け、負けなのだから。
ここまで2017年、2018年と2年連続で日本一になってはいたが、2017年はともかく、2018年はペナントレース2位からの戴冠。こんなチーム状態でもあり、「毎年毎年そんなことを望むのは、さすがに虫がよすぎる」との思いも湧いていた。
CSファーストステージの相手は楽天。ここはアドバンテージがないので、ホームで試合ができることを除けば、条件は同じ。そんなシチュエーションで迎えた初戦、頼みの先発・千賀滉大がソロ4発を浴び、3対5で敗れてしまう。あとひとつ負ければ終了…。
「あれだけ故障者が出て、よくCSまで出られたもんだ」
私も、遠い目になりつつ、それまでの頑張りに納得していたのが、楽天との初戦を落とした時点での偽らざる心境だった。
ところが、そこからまさかの快進撃が始まる。調子を落としていた選手たちが、揃って復調気配となり、まず、楽天に6対4、2対1で2連勝し下剋上の夢を打ち砕くと、その勢いのまま所沢に乗り込み、リーグ覇者・西武をなんと4タテ。ニール、今井達也、十亀剣、本田圭佑の先発4投手をしっかりと攻略し、危なげない試合運びでパ・リーグ代表の座を勝ち取った。
こうなると、もう誰も止められない。セ・リーグを制した巨人相手の日本シリーズでは、7対2、6対3、6対2、4対3と4連勝。CSファーストステージ2戦目からはなんと10連勝という、史上最強クラスのぶっこ抜きで、見事、3年連続日本一に輝いたのだった。
ちなみに、冒頭でソフトバンクになってから6回目の日本一と紹介したが、セ・リーグの相手チームはすべて違う。つまりセ・リーグ各球団に勝利する“セ・リーグ6球団コンプリート”も同時達成している。
あきらめたら終わり。たしかにそうだが、あれほどまでの大逆転劇は、いったんあきらめて、背負ったものをおろしてからでないと生まれなかったと思う。そういう意味では、各選手が、大事な場面での心身の持っていき方をわかっているのだろう。そして、それらがチームの伝統として根づいているに違いない。ホークスファンは、もうしばらくこの黄金時代を堪能できそうだ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)