5月28日、東京ドームでの巨人戦で、2013年9月1日以来の先発マウンドに立った西口は、4回を投げ4失点で敗戦投手となった。しかし、ワインドアップモーションから繰り出す躍動感のあるフォームは、まごうことなき西口文也だった。
2回のアンダーソンに浴びた一発、さらには4回に高橋由伸とかつてのチームメイトである片岡治大に許したタイムリーヒットは、本人も試合後に反省していたように失投と言える甘い球ではあったが、1回と3回は三者凡退に抑えており、持ち味であるスライダーで坂本勇人から三振を奪うなど、らしさは見せた。
200勝まであと18勝。コンスタントに2ケタ勝利を挙げていた全盛期であれば、黙っていても達成できる数字だ。しかし、そこに存在しているのは、ここ2年、未勝利に終わっているオーバー40の男である。それでも、西口ならもしかして……、と思わせる根拠がある。
西口と言えば、最多勝(2度)や最優秀防御率だけでなく、沢村賞やベストナイン、ゴールデングラブ賞など、数々のタイトルを獲得している西武生え抜きの大投手。
その輝かしい実績と同時に、ノーヒットノーランを2度も達成寸前でフイにした投手、さらには、9回を1人の打者も許さずに投げ抜きながら、味方の援護がなく完全試合を達成し損ねた投手としても知られる。
この3度も大記録を逃したことについて西口は、今春に発売された『野球太郎No.014』の中では
「運でしょ、運。それ以外の何ものでもないですよ」
と、淡々と語っている。