センバツ開幕! いま一度、選手宣誓を振り返る
待ちに待った今年のセンバツが開幕した。3月21日の九州学院vs八戸学院光星の一戦で幕開けとなり、手に汗握る試合が続いている。それに先立ち、開会式も無事に行われた。
その開会式での山場は、なんといっても選手宣誓だ。かつては、お決まりのセリフである「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々とプレーすることを誓います」を絶叫する儀式だったが、それがガラリと変わったのが1984年のこと。その年の夏の大会で選手宣誓を行ったのは、福井商の坪井久晃主将だ。坪井主将は、従来どおりの定番フレーズではなく、「若人の夢を炎と燃やし、力強く、逞しく、甲子園から大いなる未来に向かって正々堂々闘い抜くことを誓います」と、かくも鮮烈なメッセージを取り入れたのである。この選手宣誓は、当時、高校野球ファンという枠を超えて、大きな話題となった。アラフォー以上なら、記憶に残っている方もいるのではないだろうか。
今年のセンバツの選手宣誓は、組み合わせ決定後の専用抽選会で当たりを引いた、敦賀気比の篠原涼主将が務めた。
篠原主将は、決定直後のインタビューで「一生に一度なのでやってみたい気持ちはありましたが、まさか自分が当たるとは思いませんでした」と驚きの表情を浮かべていた。
また、宣誓の方向性について聞かれると「決まったばかりなのでまだ何も考えていませんが、まずは部長さんと相談します」と、引き締まった表情で話し、「代表になったので、堂々と宣誓したいと思います」と最後に力強く意気込みを述べた。
大役決定から本番までは約1週間。篠原主将は、おそらく試合とはまた違った緊張とプレッシャーを感じながらも、選手宣誓の言葉を紡いでいった。大役を果たした篠原主将は、最後のアウトをさばいた時とはまた違う安堵の表情を浮かべていた。
それ以降、春、夏ともにこういったオリジナルスタイルが完全に主流となる。甲子園で野球ができることの喜びや、チームメイトや家族、地域の人に対する感謝を語り、また歴史を重ねてきてくれた先人たちへ思いを馳せる。そして、大きな災害が起きた年にはそこに心を寄せる。ときに、あれやこれやと欲張り過ぎて、中だるみ気味になるケースもなくはなかったが、それも味。こうして、球児たちが思いのたけを詰め込んだ選手宣誓は、ファンの興味を引き、胸を熱くする一大イベントへと変貌を遂げていったのである。