なぜ、西川、雄平、マートン、レイサムはインプレー中にボールをスタンドに投げ込んでしまったのか?
7月22日の夜、偶然にもセ・パ両リーグの試合で同種の残念なプレーが発生してしまった。
日本ハム対楽天の6回裏1死一塁という場面。サンチェス(楽天)が放ったフライを左翼手・西川遥輝(日本ハム)が難なくキャッチ。2死一塁となるところだが、そのボールを内野に返さずに、そのままクルっと振り返ってレフトスタンドのファンへ投げてしまった。野球規則により、一塁走者のペーニャ(楽天)に2個の進塁が与えられ、2死三塁から試合再開となった(後続が断たれ得点は入らず)。
また、同日のDeNA対ヤクルトの一戦でも似たようなことが起きた。7回裏、DeNAの攻撃。先頭のバルディリスが打つと、一塁後方へのフラフラっと上がったフライ。打球に勢いはなかったが、飛んだ場所がよかった。二塁手の山田哲人が回り込んでフェアゾーンでなんとか追いつくも、グラブに当てるのが精一杯で、ボールはファウルゾーンへ転がる。これをカバーに入っていた右翼手の雄平はファウルと思い込み、拾い上げたボールをスタンドのファンに渡してしまったのだ。これにより、すでに一塁に到達していたバルディリスは三塁へ進み、次打者の内野ゴロで生還した。
今回は偶然にも同じ日に起こってしまった「インプレー中に、スタンドへボールを投げ入れる」という出来事。珍しいといえば珍しいものの、印象に残りやすいプレーでもあり、熱心にプロ野球を追いかけるファンは「またか」と感じているだろう。その通り、数年に1回程度は起きているプレーだ。
近いところでは、2011年5月26日の阪神対ロッテで、8回1死二塁の状況でフライをキャッチしたマートン(阪神)が、ボールをスタンドに投げ入れてしまい二塁走者が生還してしまった。2003年5月21日の巨人対ヤクルトの試合では、6回1死一、三塁からのレフトフライを、レイサム(巨人)が捕球後にスタンドに投げ入れ、同じく三塁走者が生還する、という失態を犯している。
西川、マートン、レイサムはアウトカウント、雄平はフェアとファウルの勘違いによって起こったこと。これを「珍プレー」と紹介するメディアもあったが、珍プレーでもなんでもなく、完全なボーンヘッドである。ましてや西川のプレー以外は失点につながっているだけに、投手やチームメイトも笑っていられないだろう。
それにしても、西川は6回、雄平は7回、マートンは8回、レイサムは6回と、いずれも中盤から終盤にかけてのイニングに事件は発生している。歴戦のプロ野球選手でも、このあたりでエアポケットにでも入ったかのように、ふっと集中力が途切れてしまうことがあるのだろうか。
と、ここまではお粗末なプレーを紹介してきたが、「ボールをスタンドへ投げ入れる」つながりでこんなエピソードを紹介したい。
数年前のこどもの日に行われた試合でホームランを放ち、お立ち台に呼ばれた栗山巧(西武)は、インタビュアーから子どもたちへメッセージを求められ、こう語った。
「チビッ子ファンの諸君は、将来のプロ野球選手です! しっかり練習をして、いつか同じフィールドで野球をやりましょう! そして、ファンの方にお願いがあります。ボールの投げ入れのときに、大人の方がワーッといってしまうと将来のプロ野球選手たちがケガをしてしまう恐れがありますんで、大人の人たちはファウルボールのみ。ファウルボールはしっかりキャッチしてください。選手の投げ入れは、子どもたちにぜひ譲ってあげてください。(ここでスタンドから大拍手)ありがとうございます。よろしくお願いします!」
栗山は、昨年のオフに車を運転していたときに、西武の帽子をかぶった少年を偶然見かけてサインボールをプレゼントしたことがツイッターでも話題になっていたようにファンを大切にする選手。
今回、スタンドにボールを投げ入れてしまった西川や雄平、そしてマートンやレイサムにも、そのあたりは共通する部分があるのではないか。でなければ、そもそもボールを投げ入れたりはしない。「ファンに喜んでほしい」という思いが強すぎての勇み足だったのだろう。そこは酌んであげたいところだ。
(文=藤山 剣)