【巨人】井端弘和と鈴木尚広、経験と技に秀でた男たちの職人芸を見よ!
いよいよ、巨人のペナント制覇がカウントダウンに入った。夏場のもたつきが遠い過去のように、9月に入ってからはケガ人も続々復帰し、安定した戦いぶりで2位以下を一気に突き放した形だ。
ただ、今季の巨人の戦いぶりは「軸不在」という実に巨人らしくないもの。主砲・阿部慎之助の不調で4番打者は日替わり状態、投手陣もエース・内海哲也の不調、菅野智之の一時離脱もあってローテーションがなかなか安定しなかった。
そんな中、球界屈指の「プロの技」でチームの危機をたびたび救ってきたのが39歳の井端弘和と36歳の鈴木尚広という2人の職人だ。特に9月10日、菅野の復帰戦となった阪神戦は、2人の「らしさ」で勝った試合だった。
◎チームを救う、井端弘和の勝負強さ
この試合、40日ぶりの1軍マウンドとなった菅野。初回に1点を奪われたものの、その後は阪神打線を封じ、味方打線の援護を待った。
そして迎えた終盤7回表、2死ランナー無しの場面で打席に立ったのが井端。フルカウントまで粘った末にバットを一線すると打球はレフトスタンドへ。奮闘していた菅野を救う同点弾となったのだ。こんな「絶対に欲しい1点」をものにできる勝負強さが井端の真骨頂だ。
昨季オフ、中日と決別して巨人にやってきた井端は「シーズン後、“アイツがいたから巨人は勝てたんだ”と思われたい」と語っていた。今季の井端は、先発出場はわずか30試合強。本人にしてみれば不本意な数字かもしれないが、チームとしては井端の存在があるからこそ、坂本勇人や片岡治大の尻に火がつき、チーム力が底上げされたのが間違いない。
◎18歳のときよりも強く速い、鈴木尚広の走塁技術
井端の勝負強さで同点に追いついた巨人は続く8回、坂本のタイムリー内野安打でこの試合はじめてリードを奪う。そのキッカケを生んだのが代走・鈴木尚広の脚だった。
長野久義の代走として出場し、送りバントで二塁に進んだ鈴木は、坂本の打席の3球目、三塁への盗塁を試みていた。この鈴木の動きに惑わされたのが阪神のショート・鳥谷敬。坂本の放った強烈な打球への処理が後手にまわり、ボールを弾くと、この間に鈴木は三塁を回って一気に本塁へ。「三盗」が結果的に「ランエンドヒット」となって、貴重な勝ち越し点が生まれたのだ。
今季の鈴木はここまで63試合に出場。その内、先発はたった1試合でその他は代打か代走、もしくは守備固めだ。そんなわずかな出場機会にもかかわらずここまで9盗塁を成功させ、4月29日には通算200盗塁も達成した。
さらに7月15日の試合で「神の手スライディング」と話題になった走塁でサヨナラ勝ちをもたらすなど、鈴木の「走塁技術」で勝った試合はかなり多い。200盗塁を決めた試合で原監督が「36歳のいまも衰え知らず。18歳のときよりも強く、速くなった」と評したスピードスターの足と技は、これからCS、そして日本シリーズへと進むほどにチームに欠かせない存在になるはずだ。
こんな選手が控えにいるんだから、4番やエースが不在でも、巨人が強いのは当たり前かもしれない。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。
『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、
『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/
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