あの日見た松坂の姿を僕たちはまだ忘れていない。
あの日、とは思い出す人によってさまざまだ。
たとえば1998年、横浜高時代の夏の甲子園。PL学園高との準々決勝、延長17回の死闘を思い浮かべる人は多いだろう。いやいや、右腕に巻いたテーピングをはがしただけでスタンドがどよめき、奇跡の逆転劇を呼び起こした準決勝・明徳義塾高戦だという人、ノーヒットノーランで春夏連覇を達成した決勝・京都成章高戦しかない! という人も多数派に違いない。
たとえば1999年、西武ライオンズでのルーキーイヤー。東京ドームで155キロを投げた、まばゆいばかりのプロデビュー戦。あるいは、イチローから3打席連続三振を奪い「今日で自信から確信に変わりました」という名言を残した日を挙げる人がいてもおかしくない。
上記以外でも、代打でタイムリーヒット、WBCでの2大会連続の好投、MLBで1シーズン18勝など、振り返れば切りがないほど、「松坂大輔」はずっと光り輝いていた。