先日亡くなった俳優・高倉健。任侠映画からハートフルムービーまでさまざまな役柄を演じてきた名優だが、野球ファンにとっては、1993年に公開された映画『ミスター・ベースボール』の印象が強いのではないだろうか。野球とベースボールのギャップ、そして日本の文化になじめず思うような結果を残せなかった外国人選手が、高倉健演じる監督との衝突や交流を通じて、日本野球に順応して活躍を果たすストーリーだ。
アレックス・ラミレスにとって、来日以前の日本野球のイメージはまさにこの『ミスター・ベースボール』の世界だったという。この映画で得た知識と、「赤鬼」チャーリー・マニエル(元ヤクルトほか)からのアドバイスだけで来日を決めた。それでいいと思っていた。日本でプレーするのは1年だけ。日本で得たお金で車と家のローンが払い終わったらメジャーリーグに戻ろう……それが、来日した2001年当時のラミレスの考えだった。
あれから14年。今年は日本の独立リーグ・BCリーグの群馬でプレーを続けていたラミレスが遂に現役引退を発表した。1年どころかヤクルトに7年、巨人に4年、DeNAに2年。そして独立リーグでも1年プレーを続け、遂には外国人選手としてはじめて名球会入りも果たしたラミレス。彼はなぜ成功することができたのか? そこには、『ミスター・ベースボール』同様に、日本とアメリカのギャップに悩みながらも常に克服してきたラミレスの対応力の高さが隠されていた。