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特別な“神奈川高校野球”という新たなカテゴリーで戦い続ける監督たちがこの本に集結!




高校野球 神奈川を戦う監督(おとこ)たち

 5回に渡って連載してきたこのコーナーもいよいよ最終回。初回は1930(昭和5)年の甲子園大会を紹介するなど、時系列に沿って発行された「高校野球古書」を取り上げて参りましたが、最終回はズバリ、現代の高校野球本です。

 野球を中心としたスポーツライターとして「野球太郎」本誌でも健筆をふるっている大利実さんが今年の5月に発表した“神奈川を戦う監督(おとこ)たち”を紹介します。



 まさに熱戦の真っ最中である甲子園大会。試合終了直後に勝利インタビューが行われますが、それを見て思うのが監督たちの“顔”は一般人の50歳、40歳、30歳の表情ではないなぁ…ということ。もちろん同じ世代の一般の会社員があんなにこんがりと日焼けしている訳はありませんが、それにしても各校を率いる監督たちの表情は会社勤めの大人ではない、何というか子どもがそのまま大人になったようなヤンチャな表情が垣間見えるのです。

 この本には、そんなヤンチャな大人たちがズラリ勢揃い。神奈川県の高校野球界を“主戦場”と決めた8人の監督と1人のコーチの高校野球に対する考え方が余すところなく描かれています。さらには多数の強豪私立高校が大きな壁となっている中、公立高校の野球部監督は、いかにして私立高校と戦っていくか、などについても書かれています。

 そんな神奈川の高校野球の先頭を走り、人気も実力も“全国レベル”の横浜高校の歴史は1944(昭和19)年生まれの同級生の2人・渡辺元智監督と小倉清一郎コーチの二人三脚で築きあげてきました。1970年代、80年代、90年代、そして2000年代と各年代で甲子園優勝を飾っている横浜、こんな高校は全国探してもありません。

 その横浜に立ち向かうライバル校の東海大相模慶應義塾横浜隼人日大藤沢。そして今夏の神奈川大会の話題の中心であった松井裕樹を擁した桐光学園の監督たちは“打倒・横浜”を常に目標に置き、鍛錬しています。約40年間も君臨している“王者・横浜”をいかにして倒すか…を合言葉に、ライバル校も10年、20年といった長い時間を掛けてレベルアップを図っています。それが結果的に神奈川県の高校野球のレベルを引き上げていることは間違いありません。

 そして今夏の神奈川大会準々決勝戦、桐光学園を破った直後の横浜・渡辺監督は「40数年監督をやって、数少ない重圧のかかる試合でした。平成の怪物と言われた松坂(大輔)に匹敵する投手。これまで打倒・松井に明け暮れてきた全員の勝利です」とコメント。逆にいえば“王者・横浜”もライバル校に負けないように努力していることがわかったコメントでした。

 さらには野球マンガ「ドカベン」もビックリな、各校の“個性”も見逃せないでしょう。例えば横浜隼人の帽子のマークは阪神タイガースの「HT」に似た「HY」で、Yの字も斜めの部分をできるだけ水平にしてTに近づけています。これは水谷監督が大の阪神ファンだから…といったような“味”のあるオモシロエピソードが満載なのが、神奈川の高校野球なのです。

 「全国一の激戦区」とよばれる神奈川県の高校野球界。今夏も全国一の190校が参加して甲子園行きの切符を争いました。開会式では徹夜組も現れるなど、球場に駆けつけるファンは約20万人と、ファンの熱心さも「全国一」といってもよいでしょう。そんなファンを含めた神奈川県の高校野球は、単純に“高校野球”という枠組みのなかに止まらず、特別な“神奈川高校野球”という新たなカテゴリーとして、全国の野球ファンに認知されているのではないでしょうか。

■プロフィール
小野祥之(おの・よしゆき)/プロ・アマ問わず野球界にて知る人ぞ知る、野球本の品揃え日本一の古本屋「ビブリオ」の店主。東京・神保町でお店を切り盛りしつつ、仕事で日本各地を飛び回る傍ら、趣味はボーリングと、まだまだ謎は多い。

文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterは@suzukiwrite

■お店紹介
『BIBLIO』(ビブリオ)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目25
03-3295-6088

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