受験シーズン到来! 誰もが悩む進路・高校選びについて〜どうやって決まる、どうやって決める?(前編)
子どもを野球好きにさせるには? 子どもを将来野球選手にしたい! しかし、そんな親の思惑を、よくも悪くもことごとく裏切る子どもたち。野球と子育てについて考える「野球育児」コーナーが帰ってきました! そして、来年3月に『野球太郎【育児】1』の発売が決定! どんな内容になるのか、お待ちください。
●家庭の数だけ進路への考え方がある!?
「下の息子さん、どこの高校を考えてるんですか?」
ここ1年間で一番多く訊かれた質問だったように思う。
我が家の次男は現在、中学3年生。息子と同学年の父親たちと食事をする機会が定期的にあり、その際も我が子たちの進路に関する話題で盛り上がることが必然的に多くなる。
「うちは大学、社会人でも野球を続けたいって言ってるから大学へのパイプがしっかりある高校がいいなぁ」
「うちも大学でやりたいと言ってるから、しっかり伸ばしてくれる指導者がいるところがいい。でも、その指導者がどこにいるのかがわからないんだよな」
「うちは大学受験を気にすることなく高校野球に没頭したいみたいで付属高校を考えてるよ」
「うちはなにがなんでも甲子園に行きたいみたい。チームの先輩が行ってる地方への野球留学をすることになりそう」
「うちも野球留学になりそう。甘えん坊の一人っ子だから寮生活を通じてたくましさを養ってほしい」
「うちは野球留学は構わないけど、週末に自分が応援に行けるよう、車で片道3時間、250キロ圏内にしてほしいと伝えてる」
「うちの子は強豪校じゃなく、甲子園出場の可能性が低くても、自分が試合に出れそうなところで野球を続けたいみたい。おれもそのほうがいいと言ったよ」
「うちは上の子が私立行ってるし、財政面が厳しいから、下の子はなにがなんでも公立に行ってもらいたい」
「うちもその考えなんだけど、成績が悪すぎて公立は無理ってこないだ学校で言われたんだよ……」
家庭の数だけ、進路への考え方があるんだと思ってしまうほど、多様な話が飛び出す。さまざまな事情が進路の方向性を意思とは無関係に定めてしまうことも少なくない。
●我が家の長男の場合
「野球推薦で高校に行く子って、どういう流れで話が進むの? 服部さんのとこのお兄ちゃんはどんな感じだったの?」
現在、高2の長男は、中学の時に在籍していた硬式クラブチームの推薦という形で高校に進んだ関係もあって、このような質問もよく受ける。
長男の時は中3に進級したあたりのタイミングで「進路調査票」のような用紙がチームから配られた。そこに希望する学校名を複数回答可で記し、自宅から通える学校を希望するのか、はたまた県外の学校もオッケーか。チームの推薦による進学を考えているのか、はたまた自力での進学を考えているのか、といった質問項目に◯印をつけ、チームに提出。その調査票を元に進路面談をおこなうという流れだった。
長男は自宅から通える地元関西に位置する高校を強く希望していたため、野球留学の線は、最初から消えていた。行きたい公立高校はあったのだが、学校の成績が芳しくなく、公立への進学は現実味がなかった。調査票には公立高校の名を記しつつ、「チーム推薦を考えている」という項目に◯印をつけ、提出した。
学期ごとに中学の通知簿をチームに提出するため、学校の成績は常に把握されていたのだが、入部当時からことあるごとにいわれていたのが、「どんな科目であっても1だけはとらないように。いくら野球が上手くても、1がひとつでもあると、今は高校側がとってくれない。こちらから推薦することもできなくなる」ということだった。
中学校の成績、野球の技術、選手の気質や高校との相性といった要素を元に、チームの方で総合的に判断し、進路面談にて具体的な高校名(通常はチームが既に持っているパイプの中から選出)を各家庭に提示する。チーム側は「最終学年になった時にこの子はメンバーに入れる可能性があるかどうか」といった要素を大事にしているようだった。
希望していた高校とチームが提示してきた高校が合致すれば、話は進むし、希望した高校でなくても、興味を持てる高校であれば、十分話は進む。この時に「ここならば特待生条件だ」といった条件面の話が選手によっては出たりする(ちなみに我が家はそのような有り難い話は出なかった)。
リストに興味を持てる高校がないといった場合は、チームが別の高校を再提示してくることもあるがたいていの場合は「チーム推薦に頼らず、自力でやります」という流れになっていたように思う。
●合格通知をもらうまで
長男が提示された私立高校は希望していた通り、自宅から通える距離にあり、毎年のように先輩方も進学していた。最後の甲子園出場からは10年以上遠ざかっているが、監督も代わり、再建に力を入れているという前向きな空気は感じられる高校だったため、練習見学の希望を出した。
後日、チームの指導者同行のもと、グラウンドへ足を運び、練習を見学。一部の練習にも参加し、ポジションは投手のため、ブルペンでのピッチングも見てもらえた。
チームの練習の雰囲気に好印象を持った息子が出した結論は「ここに行きたい!」。
1週間ほど家族会議のための時間をいただいたが、高校で野球をすることを考えた場合、息子の前に現れそうなカードの中で、これ以上の環境は見つからないだろうという結論に達し、最終的にはチームの代表に「あそこにお世話になりたい」と返答。チームから高校側へ、その旨が伝わった時点で、いわゆる「進路が決まった」という状態になった。
(確約の書面が発行されるわけではなく、冷静に考えるとなんだかおかしな話なのだが……)
息子の場合はこの時点で9月中旬だった。少し時間を置いた後、高校側の部長が中学校を訪問し、担任の先生に挨拶と経緯説明。学校側との三者面談で受験先の最終確認をし、あとは1月の受験日を待つのみ。この手順を踏んだ上で、入学試験に落ちたという話は、素行面で問題があった時をのぞき、少なくとも私は聞いたことがない。
(次回に続く)
文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。