入れ替え戦は2戦目必勝法?後半は対決する専修大と拓殖大のチーム紹介!
これまで2回行われた『TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会』(2回目の簡易レポートはこちら)は、東都大学リーグを愛する皆さまとともに大変な盛り上がりを見せたのではないかと思います。
先週より、東都大学リーグの入れ替え戦にスポットを当てた連載を皆さまにお届けしています。こちらを読んで、入れ替え戦までの日々を過ごして頂ければと思います。また、東都大学リーグや入れ替え戦に興味を持ち、神宮球場に足を運んでいただく方がいらっしゃれば、ありがたく思います。
☆近年の入れ替え戦事情
WBC日本代表としても活躍を見せた井端弘和(中日)も亜細亜大時代に降格と復帰の酸いも甘いを味わった入れ替え戦。
先週のあるあるでもお届けした「入れ替え戦は2戦目を取った方が勝つ」という言葉はよく聞かれますが、実際はどうなっているのでしょうか。
平成14年秋からの1部・2部入れ替え戦データを見てみると、その例外は3度。
一番最近のシーズンでは平成22年の春、立正大(1部最下位)対青山学院大(2部優勝)。○●○で青学大が復帰しています。15年秋(亜細亜大対國學院大)、18年春(立正大対國學院大)もこのデータの限りではなく、また17年春は入れ替え戦そのものが行われなかったため20分の17。実に8割5分の確率で2戦目を取った方がその入れ替え戦に勝利しているのです。
また入れ替え戦という名前でありながら「入れ替わらない戦」になったことも、過去に6度。15年、16年ともに春秋通じて「入れ替わらない戦」だったのですが、最近ではほとんどが入れ替わっています。
昇格したチームはゲームセット後、涙にも笑顔にも包まれる一方で、降格となったチームはその場から立ち上がれなくなるほどの落胆ぶりを見せます。
では残留した場合はというと…私自身2度しか見たことがないのですが、「これが入れ替え戦か…」と思ったほどのあっさり感が1回。1部チームは笑顔、2部チームは涙に暮れるというシーンが1度。前者が春、後者が秋ということも当然あったでしょうが、独特の雰囲気というのは入れ替わった場合において強く感じられました。
【独特の雰囲気】という言葉を簡単に使ってしまいましたが、これはやはり1度実際に生で見て、感じていただきたいと思います。
☆入れ替え戦出場チーム紹介
まずは1部復帰直後のシーズンで最下位に沈んでしまった専修大。昨秋の2部優勝、1部復帰の立役者と言っても過言ではない池田駿投手、大野亨輔投手が軸となる投手陣。一時はマウンドが遠ざかっていた山田智大投手もこれに加わり、経験豊富な選手で構成される層が厚いものになったかと思われました。
▲先発に救援に奮闘した専修大・大野亨輔投手
開幕カードの駒澤大戦は、途中までノーヒットに抑えられる苦しい展開となり、1−2で敗戦。失策がきっかけに先制点を献上した上、相手の自滅により無安打で1点を奪いながらもあと一本が出ず。しかし、先発した山田投手の1失点完投は収穫であるように思えました。翌日は5−5で迎えた9回サヨナラホームランを打たれて敗戦。
1勝して迎えた國學院大2回戦は3本の本塁打を含む14安打の猛攻で12得点を奪い今季初勝利。しかしながら一時は8−0とリードをしながらも、先発・池田投手が3回6失点と乱れて2点差に詰め寄られるなど楽なものではありませんでした。
3回戦は投手陣が8四死球、守備陣も6失策と崩れて1−9で敗れ、勝ち点を逃します。
今シーズン、1勝10敗で終えた専修大学。失策数は13個を数えました。
守備から崩れ、四球をきっかけに失点…。またチャンスメークできてもその後のつながりを欠いていた打線。ともに課題は残りました。
しかし、シーズン途中より4番指名打者に固定された渡辺和哉選手は3割に届かないもの2本塁打。チームトップの打率と打点を残しました。フルイニング出場を果たした高崎健太選手はチームに勢いを呼び込むラッキーボーイ的存在。
▲4番・指名打者専修大・渡辺和哉選手
▲チームに元気と勢いを呼び込む専修大・高崎健太選手
池田投手は防御率6.26と成績は残せず。
「序盤に思ったようなピッチングができなかったのですが、中盤から終盤にかけては自分本来の投球ができるようになりました。手ごたえも課題も、両方あったシーズンでした」
と振り返りました。最下位が決まった直後にも関わらず、そう語る池田投手の表情に悲壮感は漂っていませんでした。その訳とは…?
「入れ替え戦は特別なことだと思っていません。相手も1部のチームだと思ってやります。変に考えて別に自分たちを苦しめる必要もないと思うので。
前回は対戦したことない東洋大と当たったので、拓殖大はよく知っている分、気楽と言えば気楽です。でもやっぱり野球は何が起きるかわからないので、入れ替え戦までの間に体調をしっかり整えて臨みたい。昨秋は自分が勝利投手になって1部に上がったので、今年も勝ってチームを1部に残したいです」
▲チームの救世主になれるか、専修大・池田駿投手
対して2年ぶりの2部優勝を果たした
拓殖大。
開幕カードは降格したばかりの東洋大でした。初戦は2点を追う展開も、北條貴之主将の3ランや敵失などで一挙6点を返し、結局2−6と幸先のいいスタートを切りました。
▲中軸を担う拓殖大・北條貴之主将
続く2戦目は4番・高橋弘樹選手の2ランも飛び出しましたが、投打ともに相手が自滅する形で勝利。内容はともあれ連勝で勝ち点1を奪ったことで勢いに乗ります。
1勝1敗で迎えた日大戦。1点を追いかける9回2死と土壇場まで追いつめられましたが、高橋選手が逆転サヨナラ2ランホームラン。神がかり的な勝利、土俵際まで追い込まれながらも白星を掴む強さがさらに続きます。
東京農業大戦では9回、無死一、二塁のピンチから連続アウトを奪うもヒットで繋がれて2死満塁。続く打者に押し出し四球を与えて1点差に迫られる苦しい展開。球場も東農大の押せ押せムードとなり、ここでリリーフしたのが宮城慎之介投手。3球連続ボールとなり、さらに東農大の勢いは高まりますが、最終的に見逃し三振にきってとります。
▲盤石の救援陣の一角、拓殖大・宮城慎之介投手
そうして勝ち点4を奪い、5月8日、第5週目にして早くも優勝を決めました。
今春の拓大といえば、どれだけ追いかける展開になっても一振りで決められる勝負強さ、堅い守備、2枚揃った先発投手にリリーフといった盤石の投手陣。
MVPに輝いた高橋選手は3本塁打9打点.316の好成績。
▲2部MVPの拓殖大・高橋弘樹選手
キャッチャーの杉原賢吾選手も1年生とは思えない活躍。捕逸は4つを数えましたが、シーズンを通じてマスクを被り続け打撃10傑入りも果たしました。
投手陣も最優秀投手賞を受賞した尾松義生投手はリーグトップの防御率0.58、被本塁打数0は規定投球回数をクリアした投手の中で唯一の数字です。チームにとって貴重な左腕は実質初と言えるシーズンを最高の成績で終えました。
▲2部最優秀投手賞の拓殖大・尾松義生投手
しかしながら1戦目を務めていた佃勇典投手。リーグ最終戦となった国士舘大戦に3番手で登板。1イニングで8失点(自責点4)を喫しました。2部で一番の投手層に陰りがやや見えているでしょうか。
▲入れ替え戦までの復調を期待したい拓殖大・佃勇典投手
優勝が決まってから入れ替え戦まで、1カ月半弱空くこともどう作用するのか。しかしながら一昨年に味わった優勝とは意味合いも選手の感じ方も違うことでしょう。また、残留に終わってしまった悔しさも忘れてはいないはずです。
池田投手の言う通り、互いによく知っているチーム同士の対戦。気になる行方は全日本大学選手権が終了した翌日から行われます。日本一をかけた熱い戦いが終わって息つく間もなく、こちらも厳しい勝負が繰り広げられます!
▲昨秋まで同じ2部に所属していた両校
文=山田沙希子(やまだ・さきこ)/早い時期から東都大学の魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。