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楽天が日本一を手にした2013日本シリーズを選手たちの心理が表れるコメントから振り返る!

 いろいろなことがありすぎた一週間だった。

 海の向こうではボストン・レッドソックスが6年ぶり8度目の世界一を達成。地元フェンウェイ・パークでの優勝は1918(大正7)年以来、実に95年ぶり。最後のマウンドに立っていたのは、日本人大リーガーとして史上初のワールドシリーズ胴上げ投手となった上原浩治だった。

 日本では「打撃の神様」とよばれた、日本プロ野球界のレジェンド・川上哲治(93)が老衰のため死去。本当に「球が止まって見えた」のか、今となっては聞く術もなくなってしまった。

 そして、なんといっても話題の中心となったのが、第7戦までもつれ込んだ2013年の日本シリーズ。Kスタ宮城で行われた第2戦までをレポートした先週に引き続き、今週は第7戦までをレポート。監督や選手、関係者のコメントを拾いながら、今年のプロ野球の総決算でもある日本シリーズを振り返ってみよう。

◎10月29日(火)
第3戦:巨人1-5楽天
楽天・美馬学「先に4点取ってもらったし、テンポ良くいこうと思った」

 「日本シリーズ史上、身長160センチ台の投手が白星を挙げたのは二人目」という、訳の分からない記録? を達成したのが、この試合の立役者である楽天・美馬だ。

 CSファイナルステージ第3戦では、ロッテ打線を4安打に封じ、プロ初完封を達成。勢いそのままに、シリーズ初登板にも関わらず、小さい男がデッカい仕事をやってのけた。6回二死に阿部慎之助の打球を右足に受けて降板するまで、巨人打線から5奪三振、失点0と完璧な投球をみせた。交流戦では1回6失点KOを喰らうも、見事に「倍返し」を果たした美馬。しかし、この時点では誰も美馬がシリーズMVPに輝くとは思っていなかっただろう。これで楽天は2勝1敗と、ひとつリードした。

◎10月30日(水)
第4戦:巨人6-5楽天
巨人・寺内崇幸「打席に入る前に監督から“思い切り踏み込んでいけ”と言われました」

 戦前の予想に反して劣勢が続く巨人。先に動いたのは、第4戦目で大幅に打線を組み替えた原辰徳監督だった。ここまで無安打の高橋由伸、ロペスらをスタメンから外し、ボウカーや中井大介を起用。この辺りは百戦錬磨の原監督なだけに「今、手を打っておかないと後悔する」という先を読んだ起用法という気がしてならない。

 その原監督が冗談交じりで「来年の四番候補」と持ち上げているのが寺内だ。CSファイナルステージでは広島・前田健太から決勝3ランを放ち、今シリーズ2戦目もあの田中将大から本塁打を放つなど、プロ通算808打席で4本塁打の伏兵が、ポストシーズンで2本塁打を放つ“確変”をみせている。この試合でも決勝打を放った寺内が、その打席に入る前に原監督からアドバイスをもらったようだ。これで2勝2敗のタイになった日本シリーズ。どちらに転ぶか全くわからなくなってきた。

◎10月31日(木)
第5戦:巨人2-4楽天
楽天・田代富雄打撃コーチ「(藤田一也が)ベンチに下がったときから(他の選手たちが)やるぞ! となっていた」

 振り返ると、この試合が今シリーズの分岐点となったのではないだろうか。先発は巨人・内海哲也に対して楽天・辛島航と、名前だけみれば楽天の圧倒的不利は否めない。

 しかし、その辛島が素晴らしい投球をみせる。5回を被安打1、奪三振4、失点0に抑えると、2点リードした6回からは、第1戦で先発して8回124球を投げ抜いた則本昂大を投入。思いきった継投を取るが、9回、同点に追いつかれてしまう。

 そこで終わらないのが日本シリーズだった。巨人が誇る「スコット鉄太朗」の「太朗」が誤算を生み出す。延長10回表、西村健太朗が先頭の則本へまさかの四球。さらに一死後、藤田一也に死球を与えてピンチ拡大。続く銀次とジョーンズに連続タイムリーを浴びて、万事休すとなってしまった。

 実は死球を受けた直後の藤田は猛烈に痛がり、ベンチへ引き揚げ応急処置を施し、なんとか一塁走者として戻った。ランエンドヒットがかかっていたこともあり、銀次の安打で三塁に進むも、星野監督からストップがかかり「悔しかった」と涙ながらにコメントしてベンチ裏に下がった。その涙が楽天を結束させ、この日の勝利を呼び込んだと言ってもよいだろう。これで楽天は3勝2敗とし、王手をかけて地元・仙台に戻った。

◎11月2日(土)
第6戦:楽天2-4巨人
巨人・原辰徳監督「明日は世紀の一戦になる。お互い死力を尽くして全力で戦います」

 やっぱり巨人は強かった。同点の5回2死一、三塁でベテラン・高橋由伸が決勝タイムリー。「(田中は)難しい相手だったが、良い意味で開き直った」と話すと、その前に同点の2ランを放ったロペスは「前回は田中に抑えられて悔しかった。エラーをしていたし、絶対に打つという強い気持ちでスイングした」とコメント。さらに第2戦に続いて田中と投げ合った菅野智之は「やるしかない。その一心だった。自分を信じてやるしかない。余計なことは考えなかった」と興奮気味に語ったという。これで3勝3敗のタイに持ち込んだ巨人。巨人がそのプライドをかけて、2012年8月19日以来、39戦ぶりに田中に黒星をつけた“記録的勝利”だった。

 田中の女房役・嶋基宏は「中5日で160球投げる投手に文句を言う人はいない。(配球を)相手に読まれたのは僕のミス」と言い、星野監督は試合後「エースの意地があるのだろう。ファンの前で投げるのが最後というのもあったのだろう」と田中が続投を志願したことを明かした。楽天・佐藤義則投手コーチは「(負けて)残念。本人も行くと言ったし、続投は考えていなかった。明日のベンチ入りはない。アイツ(田中)にはこれが今年の最後」とコメントした。

◎11月3日(日)
第7戦:楽天3-0巨人
楽天・田中将大「日本一になったぞ〜!」

 巨人先発・杉内俊哉がまさかの2回途中2失点でKOされ、2番手の澤村拓一は楽天・牧田明久にソロ本塁打を浴びて楽天に0-3とリードを奪われる。楽天は3点のリードを美馬学、則本昂大と継投で守り切り、最終回は前日にプロ入り最多の160球を投げ、4失点完投で敗戦投手となった田中将大が巨人打線に立ちはだかった。

 この日のスポーツ新聞各紙を読み漁っても「160球を投げた翌日にブルペン待機はないだろう」、「第7戦のブルペン待機は不可能に近い」という見解がほとんどだった。しかしながら、田中は自ら志願してマウンドに上がったという。

 思い起こせば今シーズンの田中は「神様、仏様、稲尾様」とよばれた西鉄・稲尾和久と比較されることが多かった。9月6日の日本ハム戦で稲尾が1957(昭和32)年にマークした、同一シーズン20連勝のプロ野球記録に並び、14日のオリックス戦で2失点完投勝利を挙げて、その記録を56年ぶりに塗り替えた。簡単に言うと、比較対象がもう稲尾しかいないのだ。冷静に考えるとこれは凄いことで、11月1日で25歳になったばかりの若さですでに、日本プロ野球の歴史のなかで最高峰のレベルまで到達してしまった。

 筆者は稲尾が投げているところを、リアルタイムで見たことはない。「神様、仏様、稲尾様」の時代を自分は知らない。もちろん、稲尾よりも田中のほうがスゴイだとか、当時とは時代が違うからなどといった野暮なことを言うつもりは一切ない。ただ、今年の日本シリーズ第7戦を観て感じたことはひとつだけ。

 田中将大という大投手を、自分が生きている間は語り継いでいかなければならない、ということだ。今年の日本シリーズは、田中の日本シリーズといっても、過言ではなかった。


■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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