2015年は大学野球に注目! 東都大学リーグで追うべきドラフト候補は彼らだ!
●ドラフト上位必至! 日本一の称号を背負って挑む最終学年
昨秋に行われた明治神宮大会で優勝した駒澤大。エースを務めるのは今永昇太(新4年・北筑高)。2年春から主戦を担いながら、優勝争いも最下位も経験した末に掴んだ日本一だった。
今永といえば大崩れすることもなく、まさに計算が立てやすい投手といえる。キレのあるストレートと変化球を巧みに操り奪三振率も高い。それゆえに、今永は球数がどうしても多くなってしまう傾向にある。
しかし、9回を投げ切った試合で最多の球数をシーズンごとに追うと、2年春が149球、同秋150球、3年春170球、同秋131球。と、数字の上では明らかに変化が見て取れる。昨秋はこの4季で初めて奪三振数が投球回数を上回っており(86回89奪三振)、今永が一つ階段を上ったことを証明している。
▲テンポのいい投球を披露する駒澤大・今永
被本塁打の数が昨季8本(全てソロ)と多いが、今永自身は「ソロは気にしていない」と言うものの、さすがに「8本は打たれ過ぎ」と苦笑い。「改善しないといけないが、自分のような投手はしょうがない。打たれた後を抑えられているのはいい」と続けた。
試合後の囲み会見では非常にクレバーな印象を受ける。冷静に、一つ一つの言葉をかみしめながら話を展開してくれる。リーグ戦優勝後には、メンバーや控え選手への感謝の気持ちを幾度となく口にした。そういう点においてもエースの心も持ち合わせていると言える。
これまで日本代表に選出されたことはない。ようやく3年生にして全国の舞台を踏んだわけだが、周囲の評価は高い。今年1年でどれだけの実績を残せるのかが楽しみだ。
●ライバルであり仲良しでもある内野の要2人
ともに岡山理大付高出身である亜細亜大・藤岡裕大(新4年)、國學院大・柴田竜拓(新4年)。2人は今や大学野球界を代表する内野手と言ってもいいだろう。
藤岡は入学直後に三塁手のレギュラーを獲得。新人賞を受賞する最高のスタートを切った。彼の魅力は強肩強打。元投手ということもあり、一塁へのスローイングはまるで矢のよう。三塁線を抜けようか、という打球を横っ飛びで好捕し、素早く立ち上がって一塁へ送球。間一髪アウトというシーンを何度見ただろうか。
その最たるものが昨年春の優勝決定戦だ。1点リードで迎えた延長10回、一打同点の場面で打球は藤岡の守備範囲へ。藤岡は一度、弾いたものの、諦めることなくいつものような“全力投球”で打者走者を刺した。実はこの前に手を痛めており、コールドスプレーでしきりに冷やしている姿が見られたのだが、全くそれを感じさせないボールだった。
▲昨秋は土壇場の逆転劇で首位打者を獲得した亜細亜大・藤岡
一方の柴田は、昨年、ハーレム国際ベースボール大会で最優秀守備選手を受賞。さらに主にプロの選手で構成された21Uの「侍ジャパン」にも選出された。試合出場の機会は少なかったが、着実にその知名度を上げている。
藤岡とは対照的に、チームでレギュラーを掴んだのは2年秋。前シーズンは先輩野手と争う格好であり、不動のものにしたのは秋季リーグからだった。同級生の活躍に焦りを感じたこともあったという。それでも、高校の監督から送られた「お前はコツコツ頑張るタイプだ」という言葉を励みに、日々汗を流した。
そして2年秋、3年春とベストナインを獲得。昨秋は出遅れたが、復帰してからはチームに流れをもたらして3季連続2位という好成績に導いた。
声と体全体でチームを盛り立てる姿も柴田の魅力である。見ているものを笑顔にさせる清々しいプレーぶりも必見だ。
▲堅実な守備でチームを引っ張る國學院大・柴田
●キミの活躍でチームを1部に導け!
昨年は東都リーグに属するチームから9人の選手がドラフト指名された。この6年で最多人数である。上で挙げた3人の他にも注目選手が目白押しだ。
2部落ちをしてしまった青山学院大からは強打が光る吉田正尚(新4年・敦賀気比高)。引っ張りに長けており、身長は172センチと上背はないが、飛距離と打球スピードは同リーグの並み居る強打者たちにも引けを取らない。明らかなボール球を無理やり強振してレフトへ運ぶシーンも見られた。昨年は他大がこぞって敷いた“吉田シフト”に苦しんだ感は否めないが、その中でも「何とか塁に出てやろう」という気持ちはひしひしと伝わってきた。
▲2部落ちしてしまった青山学院大・吉田。早く1部に戻ってきたい
なかなか2部から抜け出せていない東洋大。エースで今季より主将を務める原樹理(新4年・東洋大姫路高)には大きな期待が集まる。なかなか他の投手を固定しきれないチームだが、原は自らのポジションを確固たるものにしている。一度、会話をすれば多くは語らずとも負けん気の強さを感じる。
プロ注目選手もさることながら、開幕前はそれほど目立つ方ではなかった選手がヒーローとなる東都リーグ。特に國學院大は4年生投手が最終学年に芽を出し、チームを救う存在になる年が続いている。
今年は一体どんな選手が現れるのか心待ちにしたい。
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。