この秋は49地区別の「有力監督対決」に注目!――1回戦から見逃し厳禁!
2014/9/23
秋の新チーム作りは難しい。センバツ出場がかかる秋季大会では、今年の夏の甲子園に出場した高校が次々と敗れる波乱が起こっている。今年の甲子園春夏ベスト8の沖縄尚学、夏に初回8失点のビハインドを大逆転劇でひっくりかえした大垣日大(岐阜)、甲子園デビューを飾った注目の1年生右腕・藤島健人を擁する東邦(愛知)が、いずれも初戦で姿を消した。
最強軍団・大阪桐蔭を苦しめた準優勝校の三重も2回戦敗退。勢力図が塗り替えられつつある神奈川では、小倉清一郎コーチの去った名門・横浜が3回戦で慶應義塾に破れ、実に県内公式戦44年ぶりとなるコールド負けを喫した。
最近は、2010年の興南、2013年の大阪桐蔭と、春夏を連破した高校が短いスパンで誕生しているが、春夏春の3連覇を成し遂げた高校は未だ現れていない。夏春連破をみても、1982年夏から1983年春に達成した池田(徳島)まで遡らなければならない。これも、新チームのスタートが遅れても、秋に勝つことができ、そして無事に冬を越えて、春までチーム力を維持することの困難さを示すデータだ。
また、冒頭にあげたチームは渡辺元智監督(横浜)、阪口慶三監督(大垣日大)、比嘉公也監督(沖縄尚学)、中村好治監督(三重)と、いずれも折り紙付きの指導者が率いるチーム。しかし、名将をもってしても、ゼロから作り直す新チームを初秋から軌道に乗せるのは至難の業なのだ。
秋季大会を追う高校野球ファンにとって、これからしばらくは気もそぞろな日々が続くわけだが、『野球太郎No.010 高校野球監督名鑑号』の「49地区別有力高校監督」ページで「注目の対決」をピックアップしている。
観戦ガイドとして以下、そのいくつかを抜粋してみよう。
●岩手/佐々木洋監督(花巻東) vs 関口清治監督(盛岡大付)
近年の岩手の強さを象徴する両校の対決はまさに「名勝負数え歌」。監督と選手たちの意地とプライドがぶつかり合いは見逃せない。
●宮城/佐々木順一郎監督(仙台育英) vs 我妻敏監督(東北)
宮城でしのぎを削ってきた永遠のライバル校を率いる両監督。指導歴が約20年になるベテランの佐々木監督に、32歳の我妻監督がどう挑むか!?
●福島/斎藤智也監督(聖光学院) vs 中村猛安監督(日大東北)
斎藤監督のひとり勝ちに待ったをかけるのは、中村順司監督(元PL学園監督/現名古屋商科大野球部監督)の長男・中村監督か? 今夏の福島大会決勝では聖光学院が土壇場から執念の逆転勝ち。
●埼玉/森士監督(浦和学院) vs 本多利治監督(春日部共栄)
昨春に全国制覇を果たした森監督と、今夏、久しぶりの勇姿をみせてくれた本多監督。これまでの直接対決は4度とも浦和学院の勝利。本多監督は「打倒浦学」に闘志を燃やす。
●大阪/西谷浩一監督(大阪桐蔭) vs 岡田龍生監督(履生社)
西谷監督は報徳学院のOB。岡田監督は東洋大姫路のOB。兵庫県の高校野球をリードしてきた名門のOB同士の対決は今、大阪府へと舞台を移している。
●高知/馬淵史郎監督(明徳義塾) vs 島田達二監督(高知)
夏の高知大会の決勝は2011年〜13年まで3年連続2―1で明徳義塾が勝利。今夏も6―5で明徳義塾が1点差ゲームを制した。両監督が死力を尽くす名勝負は必見。
●佐賀/百?敏克監督(佐賀北) vs吉丸信監督(佐賀工)
佐賀東時代に監督、部長として甲子園に出場したこともある。今夏は決勝で対戦し、延長で佐賀北が勝利。来年3月で定年を迎える吉丸監督が、最後の夏で敗れたのが百?監督率いる佐賀北だったというのは感慨深い。その対戦がなんと秋季大会1回戦でまた実現する。どちらが勝ち名乗りを上げたのだろうか?
ここで紹介できなかった残り42地区の有力監督たちによる「注目の対決」も胸躍る激突ばかりなので、詳しくはぜひ本誌を読んでいただきたい。他にも珍しい経歴を持つ「変わり種監督」、監督を影から支える「名部長列伝」なども掲載されているので、あわせてご一読を。この秋は、知力と気力を振り絞る監督たちの采配にも注目だ。
■ライター・プロフィール
山本貴政(やまもと・たかまさ)/1972年3月2日生まれ。音楽、出版、カルチャー、ファッション、野球関連の執筆・編集・企画・ディレクションを幅広く手掛けている。また、音楽レーベル「Coa Records」のディレクターとしても60タイトルほど制作。最近編集を手掛けた書籍は『ブルース・スプリングスティーン アメリカの夢と失望を照らし続けた男』、編集・執筆を手掛けたフリーペーパーは『Shibuya CLUB QUATTRO 25th Anniversary』、ディレクションを手掛けた展示会は『Music Jacket Gallery』(@新宿高島屋)など。