ヤクルト・川端慎吾は「亀」だ!努力をコツコツ積み重ね、首位打者獲得&リーグ優勝をもたらした!!/file#046
【この記事の読みどころ】
・高校時代は流し打ちができず、細身ながらもスイングが強い選手だった
・3年のセンバツで野上から放った弾丸ライナーでプロへ
・欠点を克服していき、広角打法を身につけ、首位打者を獲得!
川端慎吾の姿を見ると今も苦い記憶が蘇る。
市立和歌山商(現市立和歌山)時代の2年夏を前にした頃だった。ある雑誌でチーム取材をし、原稿を書いた。3年生のエースに玉置隆(現阪神)がおり、夏に甲子園出場を果たすチームも力があった。そこで1番・遊撃手の川端にも話を聞き、原稿に入れた。それ自体は問題なかったのだが、甲子園出場を挟み、最上級生となった秋。近畿大会に出場した戦いを見に行った時だった。チームのコーチと川端の話をしていると、その人が何気なく言ったのだ。
「川端のことを雑誌とかで取り上げてもらうと決まって『広角に打つ』みたいな書き方なんですよ。でも、アイツが逆方向に打ったのなんか振り遅れ以外ほとんど見たことないですからね」
そこでハッとした。コーチは僕の原稿を指して言ったわけではないはずだが、まさに夏前の原稿で僕も「大型ショートしても評判の川端は長打に加え広角にも打ち分けられるタイプ」と書いていたのだ。
思い返せば夏の甲子園で放った3本のヒットは、投手への内野安打とライト前が2本。それまでに見た試合でも確かに左方向へのヒットを見た記憶はなかった。それを軽く眺めてきた印象で、三拍子が揃った細身の遊撃手というイメージで、安易にタイプを決めつけ、1行を埋める言葉に「広角に打ち分けられるタイプ」と書いてしまったのだ。
まさに赤っ恥。その場でコーチに「実は僕も……」とは言い出せなかったが、以降の試合では川端の打席をしっかりと見るようになった。そして、まったく逆方向に打つバッターではないことがわかった。