引退記念! デレク・ジーターのビッグプレーランキング!
ニューヨーク・ヤンキース、MLB、それどころかアメリカプロスポーツ界のアイコンだったデレク・ジーターが今シーズンをもって引退した。本拠地・ヤンキースタジアムでの最終戦でサヨナラヒットを放つ、という、最後の最後まで、どこまでもいっても「スーパースター」だった。
▲[イラスト:横山英史]
今回は、殿堂入りはもちろん永久欠番も間違いないと言われているジーターのビッグプレーをランキング化! どのプレーもMLB公式サイトや動画サイトで見ることができるので、ぜひ検索を。
“The Flip”(2001年10月13日)
ジーターのアグレッシブで華麗な守備は印象的だった。しかし、それを支えているのが判断のスピードが圧倒的に早い、ということを感じさせる“The Flip”と呼ばれる有名なプレーがある。
2001年、オークランド・アスレチックスと戦ったア・リーグ地区シリーズで、ヤンキースは初戦、第2戦に敗れ王手をかけられる。第3戦は1−0とわずかながらリードして7回までこぎつける。しかし、2死からジェレミー・ジアンビー(翌2002年にヤンキースにやってくるジェイソン・ジアンビーの弟)がライトにヒットを打ち出塁。さらに続くテレンス・ロングが引っ張って一塁線を破り、ボールは長打コースに。
ジアンビーを還すわけにはいかないヤンキースは、ライトのシェーン・スペンサー(のちに阪神でプレー)がファウルグラウンドに転がったボールを拾いバックホーム。しかし、これが中途半端でファーストの頭を越えてバウンドする力ない返球となる。
一塁走者は生還、同点か――と誰もが思った瞬間、ショート方向から、返球のコースに対し垂直にジーターが走りこむ。バウンドした返球を拾うと、ベンチ方向に体を向けたままバックハンドトス。
これをキャッチしたキャッチャーのホルヘ・ポサダがジアンビーにタッチしてアウト。スペンサーの送球があの位置で弾むとわかっていたとしか思えない驚異的なジーターの動きでピンチをしのいだヤンキースはこの試合に勝利。残り2試合も勝ってア・リーグ優勝決定シリーズにコマを進めた。
MLB公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=ApoJk9X7Vto
“Mr. November”(2001年11月1日)
アスレチックスを破ったヤンキースは、さらにシアトル・マリナーズとのア・リーグ優勝決定シリーズを制しワールドシリーズに進出。アリゾナ・ダイヤモンドバックスと対戦した。9.11のアメリカ同時多発テロ事件の影響で、ポストシーズンは10月末までずれ込んでおり、10月31日に行われた第4戦の延長10回裏、12時を知らせる時計の鐘がヤンキースタジアムに響きついに11月に突入。
直後、打席に立っていたジーターが韓国人投手・金炳賢が投じた外角寄りの直球をフルスイング。打球はライトスタンドに飛び込みサヨナラホームランに。
この打席の前までジーターはシリーズ通算15打数1安打と当たっておらず、ポストシーズンを通じて不調だった。それが11月に入った瞬間に一発が飛び出したのを見たマスコミが、ポストシーズンに強い選手を指していう「ミスター・オクトーバー」になぞらえ、ジーターは「ミスター・ノベンバーだ(ここから復調するに違いない)」と称賛した。
ただ実際にはその後の3試合で11打数2安打4三振と復調はならず、ヤンキースは3勝4敗。ダイヤモンドバックスに世界一をさらわれることとなった。
MLB公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=V6jWXg6orGQ
“Jeffery Maier”(1996年10月9日)
メジャー昇格2年目、ショートのレギュラーとなったジーターは大活躍。ヤンキースは地区優勝を果たし、ボルチモア・オリオールズとのア・リーグ優勝決定シリーズに進む。その初戦の8回裏、3−4で1点を追いかけるヤンキースの打席にジーターが立つ。右方向に高くフライを打ち上げると、これが伸びフェンスぎりぎりまで飛ぶ。
しかし、捕球しにいったライト(のちに阪神入りするトニー・タラスコ)のグラブに入る寸前で、ヤンキースタジアムの満員のライトスタンドから差し出されたグラブがボールを弾きスタンドイン。タラスコは猛烈に抗議したがホームランの判定はくつがえらず。幸運な得点で同点に追いついたヤンキースは11回裏に主砲のバーニー・ウィリアムスに一発が出てサヨナラ勝ち。この勝利で勢いに乗ると4勝1敗でシリーズを勝ち抜き、さらには1978年以来となるワールドシリーズ制覇も成し遂げた。
ジーターの打球にグラブを差し出した当時12歳の少年、ジェフリー・マイヤー君は一夜にしてニューヨークのヒーローに。余談だが、彼は大学まで野球を続けたが、卒業時には「オリオールズがドラフトで指名を検討」というジョークを交えた報道もなされた。
ファンを大切にし続けたジーターが、ファンに助けられる強運を発揮したスターらしい名場面。
MLB公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=YVNlvnsQ828
“The Dive”(2004年7月1日)
シーズン中盤のボストン・レッドソックス戦にて。12回表2死二・三塁でトロット・ニクソンの三塁後方に上がったフライを走りこんでキャッチ。勢い余ってスタンドに身体ごと飛び込んだ。
MLB公式YouTube:http://m.mlb.com/video/v2685729/
“Crash”(2003年3月31日)
2003年の開幕ゲーム、トロント・ブルージェイズ戦。3回表、四球で出塁したジーターは、バントエンドランで三塁を狙い、頭から突っ込む。ベースカバーに入ったキャッチャーのレガースをつけた膝が肩に入り脱臼してしまった。
MLB公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=RVW1MAmUj0w
■プロフィール
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。編集書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3』(デルタ、水曜社)など。