プロ野球選手の妻が書いた本、いわゆるひとつの「妻本(つまぼん)」の代表作といっても過言ではないこの野球古本は、後に「悪妻だから夫はまだまだのびる」という続編も発刊されたほどの人気作品。
失礼を承知で言わせていただきます。私も含めて「週刊 野球太郎」読者の皆様は女性より野球の方に興味がありませんか?
この本に書かれた落合博満は若い時分からそんなタイプ。まあ女性より野球が好きというか、女性に対して無頓着といったほうが正しいでしょうか。
実際、若き日の落合も信子夫人との待ち合わせでは喫茶店やオシャレなお店などではなく、パチンコ屋を指定するなど、多くの野球人の特徴といえる「女に免疫がない」タイプだったようです。
そんな落合と信子夫人はどうやって付き合い始めたのか、気になる馴れ初め話もバッチリ載っています。
友達の紹介で知り合った2人は、例えば男女4〜5人で集まっている場で信子夫人が「落合君、ケーキでも食べない?」と勧めると「オラァ、いらない」と、今でいうKY(空気が読めない)丸だしの発言で男女問わず他の仲間を凍りつかせたとのこと。
当時からオレ流全開で、ちょっと偏屈というか生意気というか…。9歳年上の信子夫人はハッキリと<落合君にホレたというのではなく、一言でいえば、箸にも棒にもかからない男に興味を持ったということなのです。>と記しています。
「男を奮い立たせる法」というサブタイトルがあるように、この本は信子夫人が考える、夫を伸ばすための信条が50項目以上に渡って書かれています。
例えば「女はバカを装うべし」「女はふんだんに甘えるべし」といった信条はまだ理解できますが、読んでいるこちら側が慌ててしまうのは「女は夜の生活を制するべし」「女はソープランドを研究すべし」といった悪妻に相応しい信条がズラリ。付き合い始めた当初、信子夫人は落合の勧めるがままに野球で使う落合のアンダーシャツをパジャマ代わりにして寝ていたそうで(これはこれで落合自身は気に入ってたらしい)、これではダメだと自らスケスケのセクシーなネグリジェを用意して落合を誘惑。落合自身も「オオッ、これは透けて見えるでねぇか! おっかぁ!」と興奮状態に。
女性が男性を誘惑しないと、その関係は長続きしないといった独自の持論を展開しています。さらには「男にセックスがヘタとは棺の中に入っても言うべからず」の項はもう、ここでは紹介できません。もちろん今から30年以上前の信子夫人も落合も若かった頃の話です、念のため。
古本でありながらも、その「古さ」を感じさせない野球古本です。巷でいわれている「草食系男子」とまで言いませんが、女性に対してさほど興味がなかったり、孤独を好み、対人スキルに乏しい、今どきのコミュ障(コミュニケーション障害)っぽかった落合に対して興味を持った珍しい女性・信子夫人の信条は、今の時代の女性に免疫がない野球好き男子諸君に耳の痛い話、いや、タメになる話ではないでしょうか。
この本が出たオフに中日に電撃移籍し、野球人・落合博満の名が世間一般に広まっていくわけですが、彼ひとりだったらここまで有名にはならなかっただろう、悪妻・信子夫人あっての落合博満だな…と改めて思いました。今オフは、相手がいる方もそうでない方も、野球人としてお付き合いするべき女性について考えてみてはいかがでしょうか?