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セイバーメトリクスでCSを分析!パの1stステージはここを見ろ!

 セパ両リーグともに今週末の11日にクライマックスシリーズファーストステージが開幕する。いろいろな分析方法がある中、『週刊野球太郎』はセイバーメトリクスに注目! OPSやQSと、一般ファンにも浸透しつつあるデータを統計学的見地から客観的に選手の評価や戦略を考える分析手法を用いて、クライマックスシリーズ出場チームの「傾向と対策」を解説していく。


■オリックス・79勝62敗2分 .560

平均得点 4.06点(4.03)
[出塁]出塁率 .335(.328)
[長打]ISO.124(.122)

平均失点 3.26点(3.96)
[投球]FIP 3.14(3.61)
[守備]DER .698(.690)

※成績は10月5日現在のもの
※( )内はリーグ平均
※ISO(Isolated Power):長打率−打率
※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い

・FIPとDERの計算方法は最後に掲載しています。

 オフから積極的に補強を図り、シーズン中もうまく戦力を生かし躍進したオリックス。今年は失点の少なさが際立った。

 失点は、投手の投球と野手の守備によってコントロールできる。投球では奪三振と与えた四球などが強く影響するが、両方でよい数字を残している金子千尋、四球を抑えた西勇輝の先発の柱が失点を減らすのに貢献した。

 ブルペンでも平野佳寿が奪三振、与四球ともに好値。佐藤達也も安定して三振を奪っており、彼らの働きも失点を減らしていた。

 守備は投球と比べると地味だが、打球処理の状況などから平均以上のレベルだったと推測される。ポジション別に見ると安達了一の遊撃手、T−岡田の一塁手などが支えていた可能性が高い。

 ここで名前を挙げた選手が大きなケガをしたという話は今のところない。ブルペンの疲労は当然あるだろうが、CSでも彼らが一定の働きをすれば、シーズン中のような少ない失点で試合を進められるだろう。

「1試合当たり約4.06」という得点力は、ほぼリーグ平均。得点を奪う際には、走者を出す力と走者を進める力が影響するが、オリックスはいずれも平均に近く、双方の力で得点していたと見られる。

 得点源となっていたのは、出塁を果たしつつ長打力も示した糸井嘉男、長打力を発揮したペーニャ、T−岡田など。出塁面では比較的四球を選んでいた坂口智隆、安達らが貢献している。

 最大のリスクは糸井が痛めているという膝がどんな状態であるかだ。絶対的な存在なだけに、膝の状態がオリックスの得点力に相当影響するだろう。

 また、戦力を生かしきったことの裏返しとも言えるが、ここからポテンシャルを発揮して得点増に貢献しそうだとデータを示して挙げられる選手はあまり見当たらない。

 66打席で9個の四球、2本塁打を記録しているバトラーを入れるような変化のつけ方は考えられるが、守備位置、外国人枠の問題もあり簡単ではなさそうだ。出場も8月以来なく構想外なのかもしれない。

 CSで、レギュラーシーズン以上の得点が取れてしまう試合展開は考えにくい。強みの投手力を生かして勝ち進むというのが、一番想像しやすい形だろう。


■日本ハム・73勝68敗3分 .518

平均得点 4.12点(4.03)
[出塁]出塁率 .321(.328)
[長打]ISO.128(.122)

平均失点 3.95点(3.96)
[投球]FIP 3.75(3.61)
[守備]DER .690(.690)

 上位2チームと下位3チームから離れ、一人旅状態が長かった日本ハム。首位争いには加われなかったが、得点数はリーグ2位、失点数が3位とバランスのよい数字を残している。

 得点源は陽岱鋼、中田翔の2人の外野手。2人で52本塁打と長打力で得点増に貢献した。出塁率は両者ともそこまで上がらず、それも影響してチーム全体の出塁率もリーグ平均以下だった。

 陽、中田の打席でのアプローチは、楽天のジョーンズ、オリックスの糸井、ペーニャ、西武の中村剛也のような本塁打も四球も稼ぐタイプの強打者とは異なり、積極的に打っていくことで得点増に貢献していたと見られる。

 そして、想像以上の成長スピードを見せる大谷翔平は、打席数は少なかったものの陽、中田並みの長打力を見せている。CSでは先発投手として登板しない試合は打席に立つと見られ、単純計算でも日本ハムはシーズン通算成績以上の得点力でCSに臨むことになる。

 四球を選び、出塁で貢献を果たしていた選手としては西川遥輝、大引啓次などがいる。彼らの働きも影響しそうだ。

 失点についてはどうか。投球と守備に分けてバランスを見ると投球がやや非力だ。四球を少なく抑え、三振を奪っていける支配力のある先発投手は見当たらず、三振の取れる大谷、四球の少ないメンドーサなどがいるのみ。それでも失点をリーグ平均レベルに抑えられているのは、打球を打たせ野手のサポートを受けてアウトが取れているからだろう。

 そうしたディフェンスも1つの形だが、一発勝負に近いCSで敗退のリスクを下げるのは、バットにボールを当てさせない三振奪取主体の投球だ(抑え投手にそうしたタイプが多いことをイメージしてほしい)。

 打球が生まれれば、それが当たり損ねであってもヒットになる可能性がある。三振でアウトを取れれば、そういった不運は未然に防げる。三振を奪っていくスタイルの先発投手が見当たらないのは、短期決戦ではやや心もとない。

 投手を支えてきた日本ハムの守備は平均レベルで、ポジション別には中堅の陽、三塁の近藤健介、遊撃の大引などが貢献していたと見られる。日本ハムにおいては彼らの責任はより重大だ。

 大谷をうまく起用し、シーズンを支えた攻撃力をどこまで増幅できるか。また投手は、三振を取れなくても、ヒットになるリスクの低い弱い打球(ゴロなど)を打たせ、野手はそれをシーズン中と変わらぬレベルで処理していけるか。そのあたりがCSで勝っていくための条件となりそうだ。



 以上の分析からCSファーストステージの観戦ポイントはこれだ!

「オリックスの投手陣が長打のある打者を抑えられるか、それとも日本ハム打線が長打で打ち崩せるか」

 各チームの立場にたつと、オリックスはシーズン通りの力を出して投手陣が抑えること、そして、満身創痍ながらもプレーを続けてきた攻撃の要・糸井がブレーキしなければ優位に戦える。

 日本ハムは、投打において、大谷が大きな鍵を握っている。特に、野手としての出場はシーズン全体で見ると約半分。大谷が打線に加わる+αでオリックス投手陣を打ち崩す得点力を生み出したい


※ISO(Isolated Power):長打率−打率
※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い
FIPを算出する式=[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回+リーグごとの補正値
・リーグごとの補正値=(防御率−[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回)……リーグ全体の数字で計算する

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い
DERを算出する式=(打席−安打−四球−死球−三振−失策出塁)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振)
・失策出塁は全体の失策数を近似値として使用


■ライタープロフィール 秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。

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