◎第九回/R・A・ディッキー(ニューヨーク・メッツ)
イラストレーター・横山英史と申します。このコーナーでは、ベースボールを題材にしてそれをイラストで表現しています。
今回、まずはこちらのイラストをご覧ください。
こちらは、『週刊野球太郎』を編集しているナックルボールスタジアムさんがこの夏、創業されたときに僕からナックルさんにプレゼントした一枚。フィル・ニークロのナックルボールの握りを描いたものです。今でも神宮球場のすぐ近くにある事務所に飾っていただいています。
さて、つい先日のことになりますが、“ナックルボーラー”R・A・ディッキー投手が、シーズン最も活躍した投手に贈られる「サイ・ヤング賞」を遂に受賞しました! なんと38歳。長いキャリアを積み重ねた末にブレイクしてつかんだ 「投手最高の賞」、とても素晴らしいことだと思います。
ディッキー投手は今季、シーズン通して安定した活躍を続けて、ナ・リーグ2位の20勝、奪三振230(リーグ最多)、防御率2.73、投手各部門でリーグトップクラスの素晴らしい成績をあげました。加えて、オールスターゲームにも初めて選出されました。
僕はオールスター当日、マウンドからかなりと遠いアッパーデッキからでしたが、彼の投球を現地で見ることができたことは一生の思い出です。いまでも鮮明に、彼と彼の投げたナックルの軌道が記憶に残っています。
今回の受賞は、もうひとつ大きな意味を持っています。長いメジャーリーグの歴史の中で、ナックルボーラーとしては、初の受賞だということです。
歴史上には、殿堂入りしたホイト・ウィルヘルムや、300勝投手のフィル・ニークロ、その弟・ジョー、最近ではティム・ウエイクフィールドなど、偉大なナックルボーラーがいました。その投手たちでさえも、この賞の受賞にはいたらなかったことは意外でしたが、あらためてディッキー投手の今年の成績がずば抜けて素晴らしかったことがうかがえます。
イラストは、ディッキー投手の受賞の喜びをイメージした晴れやかでやわらかな表情と、最大の武器“魔球・ナックルボール”のグリップ、そして、サイ・ヤング賞受賞者に贈られるレリーフを特別にナックルボールの握りに描きました。
来シーズンも、自慢の“速いナックルボール”で打者をキリキリ舞いさせる投球が堪能したいと思います。
それにしても、ナックルボーラーが初のサイ・ヤングを獲得した年に、「ナックルボール」を冠した事務所が出来るなんて、なかなか感慨深いものがありますよね。それではまた来週にお会いしましょう。
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絵と文=横山英史(よこやま・ひでし) /野球を題材にしたイラストを得意とするイラストレーター。スポーツ雑誌のイラストやオリックス・バファローズの選手紹介イラスト(2003〜2005年)や、メジャーリーグ カンザスシティ・ロイヤルズのクラブハウスに飾られているチーム歴代プレイヤーを描た作品なども制作。1980年生まれ。
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