来年はさらに注目! 今年ブレイクした超新星ランキング
「どのルーキーが台頭するか?」に熱い視線が注がれるのは日本もアメリカも変わらない、というかむしろアメリカのほうが注目度は高いのかもしれません。今年も多くのプロスペクト(有望株)たちがメジャーの舞台に挑み、才能を披露しました。今年はマイナーでの育成期間が短めの選手が目立ちました。
ホセ・フェルナンデス
―マイアミ・マーリンズ/21歳
12勝6敗 防御率2.19 187奪三振
少年時代にキューバから亡命し、アメリカの高校を卒業。2011年のドラフトでマーリンズから1位指名された後は、全米トップレベルの有望株として評価を受け続けた。
今季は育成プログラムを早々と切り上げ、開幕メジャー入り。オールスター前までは5勝5敗だったが、後半戦は好投を続けて7勝1敗と大きく勝ち越した。投球イニング制限のため9月11日以降の登板はなく28試合12勝6敗でシーズンを終えたが、年間100敗したチームの中で孤軍奮闘した。
最大の武器は最速160キロ、平均153キロの4シームで、ルーキーながらメジャー全体トップの被打率.180を記録。172回2/3を投げて打たれた本塁打は10本と少なくトップレベル、年間防御率2.19もリーグ2位とメジャーの強打者たちを力でねじ伏せた。以下で紹介するワッカ、プイグとポストシーズンに進んだチームのルーキーを抑えて今年のナ・リーグの新人王に輝いている。
ヤシエル・プイグ
―ロサンゼルス・ドジャース/22歳
104試合 打率.319 19本塁打42打点
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横山英史さんのイラスト(6月18日更新)。メジャーデビュー直後、躍動するプイグを見て、描かずにはいられなくなったそうです。
弾丸のようなスピードと力強さを持つ高い身体能力を誇るルーキー。20歳でキューバから亡命を企てるも失敗。国内リーグで1年間の出場停止を科されたがあきらめず、1年後にメキシコへの亡命を成功させドジャースと7年契約。今季はその2年目だった。
6月3日に1番ライトとしてメジャーデビューを果たすと最初の5試合で4本塁打。流し打ってもいないのに、打球がライトスタンドに飛び込んでいく驚異的なパワーを見せ、いきなり週間MVPを獲得。地元メディアからは「こんな選手をなぜマイナーで使っていたのか」との批判も飛んだという。最終的には打率.319、19本塁打。守備でのライフルアーム(強肩)も含め、実にグラウンドで映る華のあるスターとして認知された。
これまでのキューバ出身メジャーリーガーと比べると、代表としてのプレー経験は限られており、実力の見極めは難しかったと言われている。だが資金の潤沢なドジャースは約41億円(1年当たり6億円弱)を用意した。それも安かったと言われる日も近そうだ。
マイケル・ワッカ
―セントルイス・カージナルス/22歳
4勝1敗 防御率2.78 65奪三振
通常3〜4年かけるマイナーでの育成期間を瞬く間に終わらせたワッカ。今年5月30日のロイヤルズ戦でメジャーデビューを飾ったが、前年6月のドラフト指名から1年かかっていないことになる。
レギュラーシーズンでは15試合(先発は9試合)に登板し4勝。角度のあるストレートとチェンジアップを武器に9イニング当たり9個を超えるペースで奪三振を記録した。公式戦最後の登板となったナショナルズ戦では9回2死までノーヒットノーランの快投を見せると勢いをつけて臨んだポストシーズンでブレイクした。
地区シリーズではパイレーツ打線を7回途中まで無安打。ドジャースとのリーグ優勝決定戦では2勝してMVPを獲得した。受賞インタビューでは「あなたは本当に22歳ですか?」と質問されていた。結果的にポストシーズンで4勝するなど大舞台にも物怖じしないメンタルの強さを見せた。
ちなみにカージナルスがワッカを獲得できたのは、今季不本意な成績に終わったアルバート・プホルズをFAで失った補填で、エンゼルスからドラフトでの指名枠を譲り受けたから。編成の好判断だったと言える。
最新の研究では、特に投手で「投手の身体的なパフォーマンスは若いほど高い」という結果も出ているのだとか。有望株には、育成にかける時間をこれまでよりも短くして、早いうちからメジャーで登板させることが、効率的に投手の能力を結果につなげる手だてである―――そんな判断をする球団もある模様。ワッカやフェルナンデスの活躍は、そうした理論を実証する材料となるかもしれません。
■プロフィール
協力=高多薪吾(たかだ・しんご)
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)…1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1、2』(デルタ、水曜社)など。