カープをより良く知るためのオススメ本はこれだ!(ノンフィクション編)
※こちらの記事には「野球芸人」アンガールズ・田中卓志さんは出てきません。ご了承ください。
昨秋のセ・リーグCSファーストステージ。あの甲子園球場がカープファンの赤で染まった光景は記憶に新しい。同様に、ここ数年の間で一気に「カープの赤」の面積が増えたのが書店の野球本コーナーだ。
特に昨年は、春先に『るるぶ広島カープ』、『ぴあMOOK WE LOVE CARP』 、『別冊カドカワ 総力特集広島カープ』など、普段カープ本はもちろん野球本も出していない出版社から立て続けにカープ関連雑誌が発売され、その勢いのまま16年ぶりのAクラス入りを果たしたのでは? とも思えてくるほど。
出版不況、といわれる中にあって一大人気のカープ本。それだけに、数が多すぎてどれから読めばいいのかわからない、という悩みを抱えてしまっても不思議ではない。そこで今回は、書店でもまだ入手しやすい昨年1年間に出版された本の中から、カープファン入門編として最適な本を3冊紹介したい。
◎16年ぶりのAクラス、その背景に隠されたドラマとは?
『カープ・ストーリー 〜広島東洋カープ16年目の第一歩〜』
著者は『広島アスリートマガジン』編集長の前原淳。広島東洋カープ、サンフレッチェ広島という「広島2大プロスポーツ」を扱ったカープファンなら説明不要の月刊誌『広島アスリートマガジン』が運営するアプリ「広島アスリートアプリ」で連載されたコラムとともに、昨シーズンの広島カープの戦いを振り返っていく。
特に、2012年以前とは何が変わったのか、という部分において、チームや首脳陣が種をまいた「序盤」、ベテランが水を与え耕した「中盤」、そして若手が花を咲かせた「終盤」の3つに2013年シーズンを分け、その舞台裏をつまびらかにしていく。
本書を読んで特に感じるのが、外部からの血がカープ快進撃に繋がった、という点だろう。2013年からチームに加入した新井宏昌打撃コーチが考案したホームベースを紅白で色分けして打ち分けるといった、量から質への練習方法の改革。1998年の横浜ベイスターズ日本一の立役者でもあり、現在、内野守備・走塁コーチを務める石井琢朗の指導で盗塁王を獲得した丸佳浩。そして、守備と走塁のスペシャリスト・赤松真人など、それまでカープにはいなかったスーパーサブの存在など…。
もちろん、先発4本柱の強さの秘密や、カープの魂・前田智徳の引退など、カープファンであれば絶対に押さえておきたい昨シーズンの物語が凝縮された一冊と言える。
◎「投手王国」のDNAを知りたいなら……
『カープ“投手王国”再建へ』
著者は、2010年〜2012年までの3年間、広島の投手コーチを務めた大野豊。広島東洋カープの歴史を語る上でも欠かせない伝説の左腕だ。自身の現役時代と2度の投手コーチの経験を踏まえ、長年「投手王国」といわれ続けてきたカープ投手陣の「これまで」と「これから」を語った本になる。
本書がありがたいのは、前田健太や野村祐輔、今村猛、バリントンなど、現在の広島投手陣たちの強みや課題を知ることができるとともに、江夏豊・北別府学・川口和久・津田恒美・佐々岡真司・黒田博樹といった、カープ黄金時代を築き、継承してきた伝説の投手たちについても詳細に綴られている点だ。「自分がいる世界や組織の歴史を学べ」とは落合博満の言葉だが、なぜ15年間Bクラスだったのか、なぜ資金もない地方の一球団がかつて黄金時代を築くことができたのかを知るヒントになるはずだ。
そして歴史を知ることができれば、その系譜を受け継ぎ、球界を代表するピッチャーにまで登りつめたマエケンの存在価値も、さらに高まるのではないだろうか。
◎なぜカープファンはこれほどまでに熱狂的なのか?
『カープファンは日本一』
トランペット、ジェット風船、スクワット応援……プロ野球の応援に欠かせないこれらが全て「カープ発祥」ということをご存知だろうか? 冒頭でも述べたように、近年では敵地スタンドも赤く染め、さらには「カープ女子」なる言葉まで生み出した「カープファン」のパワー。その背景に迫った、まさに「カープファンの教科書」ともいえる一冊が本書になる。
資金難にあえぐ中、猛練習と創意工夫を重ねるチーム同様、ファンもチームを応援するために知恵を絞り、愛情と情熱で全国の野球ファンを席巻してきた流れを知ることができる。その努力の成果は、昨年のWBCにおいて、セ・パ12球団の応援組織が集結して「日本代表応援団」を結成するうえで、中心的役割を広島応援団のメンバーが務める形で現れたのだ。
本書では「カープ発祥」の応援スタイルが生まれた背景を知ることができるとともに、選手別の応援歌が記されているのがとても実用的。カープファンを目指すなら、まずこの一冊がオススメだ。
今回は「2013年発売の本」からオススメのカープ本を紹介した。もちろん、過去を遡れば、広島東洋カープの黄金時代を演出した名スカウト・木庭教に迫る
『スカウト』、伝説の「江夏の21球」が収録された
『スローカーブを、もう一球』など、カープを題材にした歴史的名著はまだまだたくさんあるも最後に付け加えておきたい。
※次回は、カープ本・フィクション部門を紹介します。
文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また
「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/
@oguman1977