連勝街道ひた走る専修大!対するは9季ぶり優勝狙う國學院大〜東都優勝戦線をにぎわす対戦を総力リポート
1部復帰直後のシーズンで目覚ましい快進撃を見せていた専修大。開幕ゲームは延長12回の末、1−0で勝利。以降は安定した投手陣と打線がうまくかみ合い、6連勝。3カードを終えた時点で、唯一勝ち点を落としていなかった。
対する國學院大は、先月28日更新回で触れたように、2連勝の後、2連敗。優勝のためには何としても負けられないカードだった。
●6戦5発の強力打線を抑えた!
その陰に遅咲き4年生捕手あり
この一戦、専修大は開幕から好投を続けている大野亨輔(4年・星稜高)。國學院大は「対専大打線などを考えた結果」(鳥山泰孝監督)、新ヶ江一聡(4年・國學院栃木高)に先発マウンドを託した。
初回から國學院大打線が大野に襲い掛かる。1死一塁から、空き週に練習を重ねた、というエンドランが成功し、チャンスを広げる。4番・久保田昌也(3年・龍谷大平安高)がタイムリーを放って先制すると、さらに併殺崩れの間に2点目を奪う。
3回には柴田竜拓(4年・岡山理大付高)にソロ本塁打が飛び出した。2ランを浴びて1点差に詰め寄られた直後には、2死無走者から3連打で2点を奪って専修大を突き放した。
新ヶ江は強力な専修大打線を6回5安打2失点に抑え、リリーフした土倉将(4年・遊学館高)もリードを守り切って試合終了。9−3と初戦は國學院大が快勝した。
▲抜群の安定感を見せる國學院大・土倉
この試合でマスクを被ったのは大前将吾(4年・青森山田高)。開幕カードではいずれも途中出場で、前カードは先発出場したものの連敗。実は昨春も2試合でスタメンマスクを被っているが、いずれも試合に敗れた。秋の最終カードで白星を挙げてはいたものの、「負けてしまうのは絶対にダメ」と、この事実を気にしていた。
それでもこの日は、後が無い戦いが続いている状況で好リードを見せ、タイムリーも記録。白星に導いた女房役は試合後も清々しい笑顔を見せていた。
「ピッチャーがよく投げてくれたので80点くらいです。新ヶ江は変化球を低めに集められていました。クリーンアップを抑えられてよかったです。(専修大打線への)対策は特になく、ピッチャーのいい所を引き出そう、とそれだけでした。
親やいとこが来ていたので、何とか打ちたいと思っていました。(スタメンマスクで)ずっと勝てていなくて、モヤモヤもありました。勝ちたい、勝ちたい、と思っていたから嬉しかったです」
▲攻守に渡り活躍を見せている國學院大・大前
●投手戦の末、意外な幕切れが……
2回戦は前日と打って変わってロースコアの展開となる。
専修大は、前日ノーヒットの渡辺和哉(4年・文星芸大付高)がソロ本塁打を放って先制するが、國學院大・鈴木薫(4年・文星芸大付高)のタイムリー三塁打で即座に追いつく。
▲貴重な同点打を放った國學院大・鈴木
専修大・堀田竜也(2年・常葉学園菊川高)、國學院大・沖垣泰史(4年・生光学園高)の両先発投手は、粘り強いピッチングで追加点は許さない。國學院大は前日同様、7回から土倉がリリーフ。回数は決して多くはなかったものの、下級生時から登板経験を持ち、結果を残していた投手。だが、昨年は成績がふるわずに登板機会は減っていった。
今季開幕前には「去年は自信を持ってマウンドに立てなかった」と振り返っていた土倉。しかし、昨年のような姿は見る影もない。自身と信頼を勝ち取って、今シーズンは抑えとしての役割をこなしている。
前日も最終回にピンチを招きながら最少失点で切り抜けた右腕。鳥山監督も「大量失点の可能性がある難しい中、落ち着いていた」と賛辞を送った。
そして、この日は、2イニングス連続で、三者凡退の後にランナーを2人背負う状況となったが無失点で切り抜けた。
その裏、2本のヒットなどで2死満塁とすると、打席には大前。代わった高橋礼(2年・専大松戸)に対して、2球で追い込まれたものの、ここからが粘り強かった。しっかりと見極めてカウント3−2。フルカウントからの投球も余裕を持って見送り、ボール。前日に続いてスタンドから声援を送る親族を前に、サヨナラ四球を選んだ。
▲(左上から)四球を選び、一塁に向かう大前。喜びを抑えきれず何度もジャンプ!
2−1と接戦をものにして國學院大が2連勝、勝ち点を2とした。
5週目を終えて土倉は抜群の安定感でチームに白星を呼び込む活躍を見せ、防御率0.60でリーグトップに躍り出た。鳥山監督や國學院大の選手たちは「準備」という単語をよく使う。入念に重ねた準備がもたらした成果により、試合を経るごとに成長して、いい影響をもたらす好循環。國學院大名物になっている『4年生投手の覚醒』。今年は土倉の番だろうか。
◎試合後コメント
國學院大・鳥山監督
「後半勝負と話していた。相手も準備をしてくるから、厳しくなると思っていた。バッテリーがよく投げ切りましたね。土倉も苦労して春を迎えたが、たくましくなって嬉しい。うちらしい4年生の活躍ですね。
昨日、鈴木薫には『明日、必ずお前の流れが来る』と、2人きりで指導した。櫻吉(宏樹・一塁手/4年・金沢高)の守りが救ってくれているし、いぶし銀の活躍をしてくれている。最後の大前は、彼なら何とかしてくれる、という顔や雰囲気をしていました」
國學院大・土倉投手
「長打やホームランをケアして、単打は打たれても連打がなければいい、と気持ちに余裕ができました。自分は投げたら抑えるだけ。それが攻撃に繋がりますし、自分の役割を全うするだけです。
自分は試合を重ねるごとに自信が出てきました。チームも負けた後も落ち込みませんでしたし、前向きにいられるところが去年とは違います。3年生がチーム作りに協力してくれて、久保田や平川(真大)がやりやすくしてくれるので、あいつらのおかげです」
勝ち点3を唯一挙げている専修大は、今週試合はない。専修大に続く、國學院大と中央大はそれぞれ亜細亜大、駒澤大との対戦が予定されている。専修大、國學学大、中大が勝ち点4、8勝2敗で並ぶ可能性もあり、ますます目の離せない試合が続いていく。
▲専修大・堀田は好投を見せるも及ばず…
▲勝利には結びつかなかったが、今季3本目のアーチをかけ、強力専修大打線を牽引する渡辺
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。