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センバツ開幕! ストップウオッチで野球に使える身体能力が高い選手を探せ!

 今年もセンバツが開幕した。アスリートとして将来性のある選手をストップウオッチの測定でいち早く見つけることを目指す『炎のストップウオッチャー』も測定開始である。まずは基本的な足の速さを調べる「一塁かけ抜け」について、小手調べとして大会初日と2日目の6試合を測った。

【おさらい】一塁かけ抜けタイムが何を表すか?

 一塁かけ抜けは、打者がスイングしたバットに投球のボールが当たった瞬間をスタートとし、打者走者が一塁ベースをかけ抜けるまでのタイムを計測したものだ。

 足の速さなら50メートル走のタイムが選手名鑑などに出ているからそれでわかるのでは? と思われがちだが、実はそうでもない。野球の場合、通常の「よーいドン」で走る徒競走形式とはまた違うスピードが求められる。

 まず、スイングしてからスタートを切らねばならないこと。また、塁間は27.431メートルと50メートルの半分程度の距離しかないため、打ったらすぐにトップスピードに持っていける加速力が必要だ。

 プロ・アマ問わずトップクラスの選手のみが体現できる“聖域”は3秒台。時間が短い分、スタートや加速がほんの一瞬遅くなるだけでタイムには大きな差として現れる。「足が速い」以外に普通の内野ゴロを内野安打に変えるためのテクニックの有無が一塁かけ抜けタイムには含まれている、というわけだ。

 高校生の場合は、さすがに4秒を切る選手は少ないが、甲子園1大会の中で大体数人、多い年であれば10数人が記録することがある。そのような事前知識を基準に以下の測定結果を見てほしい。参考として、50メートル走のタイムもつけておいた。

★春のセンバツ大会2日目までの一塁かけ抜けタイム


 まだ、6試合ということで、集まったデータは少ない。さらに打者は必ずしもゴロを打つわけではない、ということもある。隣の50メートル走のタイムと比較してほしい。実際にかけ抜けているタイムとぜんぜん違うでしょ? こういう違いがあるということなのだ。

■常総学院の1、2番コンビは聖域超えの可能性も

 ただ、左打者で初戦から5盗塁を決めた常総学院の1、2番コンビの一人・竹内諒が記録した4秒02は間違いなく好タイムと判断していいだろう。4秒付近のタイムは、仮に打つことよりも走ることを前提にスタートを切りながらの「走り打ち」をしたとしても、普通の走力の選手では到底記録できるタイムではないからだ。

 残念ながら、コンビのもう一人である宇草孔基はヒットや死球などで一塁をかけ抜ける機会がなくて測定できなかったが、走りっぷりを見る限り、竹内とほぼ同等に近かった。おそらく、二人とも基本的にかなりの走力を持っているのは間違いないだろう。

 また、竹内に次ぐ4秒10を記録した東海大菅生の江藤勇治も、ショートゴロでアウトになった打球ということで、後半やや余裕を残してのかけ抜けだったので、最後まで全力で走った場合には、もう少しいいタイムが出ていた可能性があった。



 そのあたりは、この測定におけるネックのひとつではある。打球にもよるが、選手は必ずしも全力疾走しているわけではないので、測定しながら、どの程度の力でかけ抜けたかをよく見ておく必要がある。

■なかなかのスピードを持つ杉野彰彦(今治西)

 次に右打者へ移ろう。左打者と違うのは打席の位置が一塁ベースに対して、わずかながら遠くになることだ。そのため、タイムにして0秒20程度は遅れることが多い。また、振り切って左足が大きく三塁側へステップしてしまった場合などは、その差が0秒50程度にまでおよぶことすらあるのが現状だ。

 そう考えると、今回の測定でトップとなった杉野彰彦(今治西)の4秒33は、例年ごく普通に出てくる「なかなかに速いタイム」という感じである。高校生の右打者なら4秒20を切るようだと「かなり速い」として構わないと思う。



 ちなみに、プロの右打者で今、一番速いと思われるのが菊池涼介(広島)。昨秋の日米野球において3秒86という左打者顔負けのタイムを記録している。外角の緩いカーブに片手一本で身を乗り出すようにして打った三塁ゴロだったため、ちょうど一塁ベース方向に体重が乗った有利なスタートではあったが、3秒80台を記録できるのは、プロにおいても時には3秒70台を叩き出すこともある青木宣親(ジャイアンツ)や石川雄洋(DeNA)など数えるほどしか存在しない。

 今大会では、こうした過去のデータに驚きを与えてくれるような選手が登場するだろうか? 毎年、そんな楽しみを抱きながら、測定をしている。

 次回は、もう少し測定数が増えた状態での結果を披露するのでお楽しみに。


■プロフィール
文=キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球に関するありとあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。ライター活動の傍ら、2013年には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。

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