ついに開幕した、夏の甲子園大会。全国の舞台で勝ち抜いたチームがあれば、敗れ去ったチームもあるのが甲子園。試合終了時には、ベンチ前で泣きながら甲子園の土を持って帰る球児の姿がテレビに映し出される。
実はこの甲子園の土には、知らざれるエピソードがいくつもある。今回はその甲子園の土にまつわる話を集めてみた。
甲子園の土は、建設当時からこだわりを持って選別、用意されたものだ。1924年の開場当初は、火山灰の黒土と白土(海砂)をブレンドした土を使用。しかし、当時の土はやや白っぽく、選手たちにとってはボールが見辛いうえ、スタンドの観客からも、太陽の光が反射して球場全体を見渡す際は、「目に悪い」と懸念された。
そこで試行錯誤を重ねながら、使用する土を吟味。もちろん土の質にもこだわり、球場の職員が何度もスライディングをして、その使用感を試したという記録も残っている。
その結果、現在は桜島(鹿児島)、阿蘇山(熊本・大分)、大山(鳥取)などの黒土と、中国福建省の白土をブレンドした土を使っている。また土の種類は毎年決まっているわけではなく、雨量と日差しによって、微妙に配合を変えているこだわりようだ。
こだわりを持つ甲子園の土。さらに甲子園球場ではグラウンドにも、さまざまな工夫が施されていた。水はけをよくするために、球場建設当初からグラウンドは周囲より1メートルほど盛り上げられた。
また、グラウンドを断面図にして説明すると、一番下には15〜30センチ角の石を並べ、その上に小石を敷き詰め、さらに石灰ガラと砂を混ぜたものを敷いた。さらに表面には、黒土と赤土を混ぜた土を10センチほどの厚さに盛って、雨が降っても水分が吸い込みやすくなるよう工夫された。しかし、甲子園完成から数年間は、水はけの悪さに苦労したという記録も残っている。
土のグラウンドは、ある程度水分を含んでいた方がプレーしやすいということは、野球経験者ならご存じのとおり。カラカラで水分を含まない場合、風が吹くと砂埃が舞い上がり、野球どころではなくなる。適度な水分を含むことで、打球が高くバウンドすることもなく、内野ゴロも捌きやすくなる。ただし、水分をあまりにも多く含んだ状態だと、グラウンドはぬかるみ、ゴロの場合はボールに土が付着してしまう。
甲子園では試合前に大量の水が撒かれるが、当日の天気や風の強さなどに応じて、グラウンドに撒く水の量などを調節している。この辺りの微妙なさじ加減こそ、グラウンド整備の腕のみせどころといえるだろう。