千里の道も一歩から
マスコット最速の足で刻む、北の大地への確かな足跡
開幕から早1カ月。パ・リーグで開幕ダッシュに成功したのは北海道日本ハムファイターズ。そのダッシュ力は、まるであの男のようだった……そう、ファイターズのマスコット、ブリスキー・ザ・ベアー(通称B・B)だ。
かつて、フジテレビ系「トリビアの泉」の中で「球界マスコットの中で最も足の速いのは誰か?」という企画が行われ、見事優勝を果たしたのがB・Bだった。
この企画が放送されたのは2004年6月のこと。2004年といえば、ファイターズが本拠地を北海道に移転した年。つまり、B・Bも球団マスコットとしてデビューしたばかりだったが、この「マスコット最速」という称号で一気に認知を広めることに成功した。
あれから10余年。今や北海道では圧倒的な知名度と、熱狂的なファンで知られるファイターズ。しかし、移転当初はここまで成功できるとは誰も予想できていなかった。
「北海道の人間はみんな巨人ファン」
「道産子気質は新しいモノ好きだけど飽きっぽい」
そんな環境でどうやってファイターズのファンを増やすことができたのか? その成功の裏にあったのは、派手な演出によるエンターテイメント訴求と、北海道全域への地道な営業活動という「ファンサービス2刀流」ともいえる戦略。その鍵を握っていた一人がB・Bだった。
ファイターズ移転成功の立役者、としてよく名前が挙がるのは移転前年の2003年から指揮を執っていたトレイ・ヒルマン監督と、移転のシンボルとして2004年から加入した新庄剛志の2人だろう。
球団は新庄とヒルマンに対して「他の選手たちに、ファンサービスとは何かを教えて欲しい」とプレー以外での協力を要請し、2人はこれを快諾。その後の「新庄劇場」の数々、そしてヒルマン監督自ら率先してファンへのサインに応じていたことは野球ファンであればご存じの通りだ。
ただ、そうした「わかりやすい」ファンサービスは一過性のものになりやすい。北海道移転から2年後の2006年、ファイターズは44年ぶりの日本一を達成し、北海道の盛り上がりは早くも最高潮へと向かう。だが、頼みの綱の新庄はその2006年限りで引退。飽きっぽいと言われる道民気質を考えれば、一気に高まった熱が急降下してもおかしくなかった。
そこを繋ぎ止めたのがB・Bだった。移転当初から北海道各地の幼稚園や保育園を訪問し、ファン層を広げる地道な活動を続けていたB・B。その延長で2006年から始めたのが「212物語」。北海道の212市町村をB・Bが自ら訪ね、町の魅力や特産品をレポート。ファイターズの試合前に札幌ドームの大型ビジョンで放映される、ファンにはおなじみの映像で、毎年DVDとしても発売されている。