野球殿堂入りを果たした表彰者は、その功績を称え、肖像のレリーフが野球殿堂博物館に掲額される。野球殿堂博物館は東京ドームの21番ゲート横に入口があり、館内には日本野球の様々な資料や元選手のユニフォーム、グラブ、バットなどが多数飾られている。
元々は1959年、野球体育博物館として当時の後楽園球場横に開館。記念すべき第1回の野球殿堂入りでは「日本プロ野球の父」と言われた読売新聞社社主・正力松太郎氏、日本初の野球チーム「新橋アスレチック倶楽部」を作った平岡ひろし氏、日本プロ野球創成期の名投手・沢村栄治氏ら9名が表彰された。
1988年に東京ドームが開場されると現在の場所に移り、最近では、昨年11月の侍ジャパン強化試合で大谷翔平(日本ハム)が天井の隙間に放ったボールが展示され話題となった。
21世紀に入った2002年、2003年には通常の表彰とは別に「新世紀特別表彰」として野球普及に大きく貢献した人物を称える表彰が設けられた。
2002年、その第1回表彰では明治時代の俳人・正岡子規と、元大リーガーで日米の架け橋となったフランク・オドール氏が選ばれた。
正岡子規と言えば大の野球好きとしても知られ、自らの雅号を「野球(のぼーる)」とつけるほどだった。殿堂入り後の2006年には、上野公園で野球に興じた縁もあって同公園内の草野球場が「正岡子規記念球場」と名づけられた。
続く2003年には明治初期に来日し、日本で初めて野球を教えた英語教師のホーレス・ウィルソン氏と、大正時代に軟式ボールを発明し、軟式野球を広めた鈴鹿栄氏の2名が表彰された。「新世紀特別表彰」のレリーフは、通常の四角いレリーフとは異なり、卵形のものとなっている。
気が早い話だが、来年の野球殿堂入り候補者にも注目したい。プレーヤー部門では来年、新たな有資格者に3名の大物が名を連ねる可能性が高い。ダイエー、ソフトバンクの主軸として活躍した侍ジャパンの小久保裕紀監督、1492試合連続フルイニング出場の記録を持つ阪神の金本知憲監督、そして巨人、ヤンキースと日米の名門球団で活躍した松井秀喜氏だ。
この3名は、昨年、殿堂入りした工藤公康監督(ソフトバンク)以来となる有資格1年目での殿堂入りが大いに期待される。また、来年1月の時点で43歳となる松井氏が殿堂入りした場合、2014年に選ばれた野茂英雄氏の45歳4カ月を塗り替える最年少での殿堂入りとなる。
エキスパート部門に目を向ければ、今回の星野氏、平松氏に次ぐ3番目の票を集めた元巨人監督の原辰徳氏の殿堂入りにも期待だ。
プレーヤー部門では殿堂入りを逃した原氏だったが、エキスパート部門では今回が初めて有資格者となった。リーグ優勝7回、日本一3回という巨人監督での実績に加え、2009年の第2回WBCでは日本代表監督として世界一を達成しているだけに、有力候補といえるだろう。
文=武山智史(たけやま・さとし)