1915年に産声を上げた全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高校野球選手権大会)。いわゆる「夏の甲子園」だ。
その人気ぶりを受け、選手権とは違った選考基準の全国大会として、1924年に始まったのが選抜中等学校野球大会。これが現在の選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)だ。
「選手権とは違った選考基準」というのは、「県単位でなく、地域単位で出場校を“選抜”して決める」というもの。現在では、北海道から九州まで以下のように、地域ごとの出場枠が設定されている。
【地域ごとのセンバツ出場枠】
北海道:1校
東北:2校
関東・東京:6校
(まず関東から4校、東京から1校を選出。残り1枠を両地区の1都7県から1校選する)
東海:2校
北信越:2校
近畿:6校
中国・四国:5校
(まず中国・四国からそれぞれ2校を選出。残り1枠を両地区の9県から1校選出する)
九州:4校
基本的には上記10地区で行われる前年の秋季大会の成績を元に、地域性も加味しながらまず、出場32校中28校が選出される。
なお、6校が選ばれる関東・東京は、まず関東で4校、東京で1校を選出し、残る1校を両地区の前年秋の戦況を比較した上で決定。中国・四国も同様に、まず中国で2校、四国で2校を選出。残る1校を両地区から決定する。
これに加えて、2001年からは「21世紀枠」という特別出場枠が設けられた。現在、「21世紀枠」で出場するのは3校となっている。
また2003年からは11月に行われる明治神宮大会の優勝校が所属する地区に、通称「神宮枠」と呼ばれる出場枠が1つプラスされるなど、時代に合わせたアレンジが施されて今日に至る。
ややわかりづらく感じるかもしれないが、県大会(府大会含む)だけでなく地区大会までも勝ち上がらないと出場切符が手に入らないという意味では、夏の甲子園よりもシビアかつスリリングな選考基準だ(北海道、東京都は秋の優勝チームが選ばれることが原則)。
同時に、府県大会で優勝できなくても、第2、第3代表として地区大会を勝ち上がれば、甲子園に出場できる可能性がある。そういう意味では、安定感のある実力校にとって出場チャンスが大きな大会ともいえる。
上記のような選考基準で成り立つ春のセンバツを、さらに特徴的にしているのが先述した「21世紀枠」の存在である。もう少し、詳しく見ていきたい。
「21世紀枠」は21世紀を迎えた2001年の第73回大会から設けられた特別出場枠で、2007までは2校、以降は3校が毎年、選ばれている。
「21世紀枠」の主な選出基準は、「部員不足や施設面のハンデを克服した学校」、「校内や地域での活動がほかの生徒や他校の模範になっている学校」など。
各都道府県の高野連から推薦校が1校選ばれ、さらに各地区で1校が選ばれる。その「21世紀枠」候補9校のなかから3校が選ばれる仕組みになっている。
ほかに「秋の都道府県大会でベスト16以上に入っていること」といった条件もある。ゆえに文武両道の公立伝統校が推薦されることも多い。この制度は、恵まれた練習環境を持つ強豪私立校以外の高校に門戸を開くことにつながっている。
これまで「21世紀枠」で出場したのべ41校の戦績は、19勝45敗。今センバツは、不来方(宮城)、中村(高知)、多治見(岐阜)が「21世紀枠」で出場する。
不来方は部員10人のため紅白戦などの実戦練習ができないなか、秋の岩手県大会で準優勝を果たし、東北大会にも出場した。中村は1977年のセンバツで準優勝して以来、40年ぶりの甲子園。当時を知る高校野球ファンにとっては感慨深いものがあるだろう。
多治見は狭いグラウンドをほかの部活動と共用。工夫を凝らした練習を重ねて秋の岐阜県大会を制した。また、ボランティア活動に熱心なことも選出にあたっての評価点となった。
この3校がどんな戦いぶりを見せてくれるのか。今から楽しみだ。
「センバツ基礎講座・1時間目」はいかがだっただろうか?
「負ければ終わり」の夏の都道府県大会(北海道=南北、東京=東西)を勝ち抜いた代表校が集う夏の甲子園と比べると、センバツ出場校の選出を難しく感じていた方もいるかもしれない。
ただ、地区大会の出場枠から確認し、「神宮枠」「21世紀枠」と順を追って見ていくと、地区を代表する選りすぐりの「センバツチーム」が集う大会という特徴がすっと頭に入ってくるだろう。
夏の甲子園が「おらが町」の代表校による都道府県ごとの決闘だとしたら、センバツは地域ぐるみでの合戦とも言える。「自分の府県の代表がいないからな〜」と嘆く人が回りにいたら、ぜひ選考基準を教えてあげよう。
それでは「センバツ基礎講座・2時間目」もお楽しみに!
文=森田真悟(もりた・しんご)