ホークス一筋19年、松中信彦が着慣れたユニフォームを脱ぐ決断を下した。
9月29日の試合前に記者会見を行い、その経緯を説明。また、本拠地最後のゲームとなった10月1日には、試合後にファンへ向けてあいさつ。最後まで声を枯らした博多っ子へ「19年間、あたたかいご声援ありがとうございました!」と感謝の思いを涙ながらに語った。
10月2日には登録抹消となり、残り試合にも帯同せず、シーズン終了後に自由契約の手続きがとられる見通し。今後は他球団からのオファーを待つことになるが、偉大な実績を残した選手とはいえ、その道のりは簡単ではなさそうだ。
2004年の三冠王を含めて、首位打者2回、ホームラン王2回、打点王3回と、2000年代は打撃タイトル争いの常連だった松中。しかしここ数年は、体調が万全ではないこともあって、出場試合数は激減。ホームランも、2012年7月16日のヤフードームでのオリックス戦で、木佐貫洋から放った一発を最後に途絶えていた。
今季も開幕から2軍生活を送り、若手に混じって77試合に出場、打率.299で11本塁打と健闘したものの、優勝決定後に1軍に昇格して以降、出場した9試合の成績は以下の通りだ。
9/22 四球
9/23 三振
9/25 二飛
9/26 三ゴ
9/27 右飛 三振 二飛
9/28 三振
9/29 中飛 右安打
9/30 三振 三振
10/1 三振 三振 三振 三振
トータルでは、15打数1安打1打点9三振。ヒットは楽天の松井裕樹から放ったライト前タイムリーの1本のみ。10月1日の楽天戦では、則本昂大のピッチングが冴えていたとはいえ、三度の対戦は見逃し、空振り、空振りの3三振、最後の打席も、フルカウントから19歳の松井の投じたストレートに松中のバットは空を切った。
10月1日のスピーチの最後に、「もし違うチームで対戦することがあれば、倒しに行きます!」と、選手としてグラウンドに立つ決意を改めて示した松中。現役でただひとりの三冠王に、そのチャンスが訪れるだろうか。
文=藤山剣(ふじやま・けん)