個性あふれるドラフト候補選手の「正味の実力」を探る「ドラフト候補怪物図鑑」。
今年のドラフト会議での上位指名が濃厚な目玉選手9名と、来年のドラフト会議で要注目の3名を4週間に渡って徹底解剖。新人ライターの山岸健人さんが、『野球太郎』持木秀仁編集長に根掘り葉掘り質問しまくります。
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今回は最速153キロのストレートと多彩な変化球を武器に、無名の存在から大学日本代表のエース格までにのし上がった佐々木千隼投手(桜美林大)を徹底解剖!
山岸:持木さんは佐々木投手を見て、イメージするプロのピッチャーはいますか?
持木:斎藤雅樹投手(元・巨人)を彷彿とさせますね。
山岸:斎藤雅樹投手ですか! 佐々木投手はスリークオーターですよね。
持木:けっこう低い位置で腕を振るスリークオーターなので、かなりサイドスローに近いんです。
山岸:ほかにも斎藤雅樹投手と似た点があるのでしょうか?
持木:キレで勝負するタイプなのかと思いきや、わりと球威で押す感じなんですね。そういうところも斎藤雅樹投手っぽいかもしれません。実際、「斎藤雅樹2世」と評価する声も聞こえてきます。
山岸:球威で押せるということは、ストレートのスピードもかなりのものでしょうか?
持木:最速は153キロをマークしています。シュート回転気味のストレートなんですけど、腕を下げて投げているので、バッターからすると恐いでしょうね。シュート回転は欠点にもなりますが、その軌道も上手く利用できれば武器になります。
山岸:少しコントロールが甘くなっても打ち取れるということでしょうか?
持木:大学野球では打ち取れていました。ただ、レベルの高いプロの打者は甘いボールは確実にとらえますから、その点は心配ですね。
山岸:変化球はどうでしょうか?
持木:ツーシーム、スライダー、シュート、カーブ、フォークと多彩。ツーシームを両サイドに投げ分けられる技術もあります。
山岸:決してストレートの球威頼みの投手ではないと。
持木:はい。今年に入ってカーブで緩急をつけたり、縦の変化に磨きをかけるなど、投球の幅を大きく広げています。
山岸:佐々木投手は元々、無名の選手だったんですね。
持木:中学時代は軟式野球の無名の選手でした。都立日野高校を経て桜美林大に入って、2年生の時から着実に結果を出してきました。理想的なステップアップの仕方ですね。
山岸:最後には大学日本代表のエース格にまで成長しましたね。
持木:無名からのし上がった成長ぶりも素晴らしいです。
山岸:でも、無名ゆえの「苦しみ時期」を耐えて開花したという雰囲気でもないですよね。
持木:もちろん本人的には苦労したんだろうとは思いますが、伸び伸びと野球をやってきたら「いつの間にかドラフト1位候補になっていた」という風に見えます。
山岸:伸び伸びやっていたらドラフト1位候補ですか! すごいサクセスストーリーですね!! この経歴だと勤続疲労も心配はなさそうです。
持木:そうですね。故障をした話は聞いたことがありません。
山岸:プロに入ってから心配な点はありますか?
持木:コントロールにバラつきがあるのが心配ですね。それと、注目されるなかでどれくらいの投球ができるのか。それは気になります。日米大学野球では投げていますが、全国大会の経験がないので、大舞台での投げっぷりを見てみたかったです。
山岸:全国大会は普段のリーグ戦とはプレッシャーも、相手のレベルも違います。
持木:仮に全日本大学野球選手権に出るとなると、エースはまず1戦目に調子を合わせてきます。そこにしっかりしたピッチングができれば「やはりいい投手だ!」と評価されます。
山岸:そこで相手チームには対策を練られ、周囲の期待の目が高まるなかで……。
持木:2試合目に臨むことになります。そういう状況で、しかも疲労が重なるなかで本来の投球ができる投手が本物でしょう。
山岸:まだ未知数なところも多いということですね。
持木:ただ、そうはいっても、首都大学リーグで、菅野智之(東海大→巨人)に並ぶ53回無失点をマークしています。十分、プロで勝負できる投手でしょう。プロの世界でも大きく羽ばたいてもらいたいです。
日米大学野球ではメジャーリーガーの卵たちを相手に好投し、日米のスカウト陣を唸らせた佐々木投手。「斎藤雅樹2世」と評される類い稀な素質を持ち、ドラフト1位指名が濃厚だ。無名の投手がドラフト1位で指名され、そしてプロ球界のエースに……。サクセスストーリーの続きが楽しみだ!
文=山岸健人(やまぎし・けんと)