今季の開幕に向けて、スイッチヒッターへのモデルチェンジを試みた阪神の選手が2名いる。
一人はルーキーの熊谷敬宥だ。仙台育英高時代は、内野手として上林誠知(ソフトバンク)や馬場皐輔(阪神)らとともに甲子園に2度出場。立教大では大学日本一になるなど輝かしい経歴を誇る期待のドラフト3位選手で、ウリは俊足と大学ナンバーワンと評された二遊間の守備だ。
となると、やはり課題は打撃。本来は右打ちだが、ドラフト指名後にはスイッチヒッターへの挑戦を球団から打診され、習得へ向けて励んでいる。
開幕は2軍スタートとなったが、ひと足先に始まったファームの公式戦では、両打席に立ち、タイムリーを放つなどモノにしつつある。左打席での打撃をものにすれば、足を活かした内野安打も増えてくる。スイッチヒッターへの挑戦で、選手としての幅がより広がったのではないだろうか。
スイッチヒッターに挑戦したもう一人が江越大賀だ。こちらは昨年の秋季キャンプから、スイッチヒッターを目指しバットを振る毎日。春季キャンプからオープン戦が始まっても、両打席に立っていた。
しかし、3月半ばには、本来の右打席に専念することを決断。チーム内でも1、2を争う俊足の江越だけに、左でも打てるようになれば、本人のため、チームのためにもなると判断しての首脳陣のアイデアだったが、やはりそう簡単ではなかったようだ。
とはいえ、反対打席から投手を見たことで、打者として成長できた部分もあったはず。持ち味である豪快な打撃のさらなるレベルアップを期待したい。
スイッチヒッター挑戦はかなり大掛かりなモデルチェンジだが、そこまでではなくても、打席での足やグリップの位置から、足の上げ方やバットの出し方に至るまで、ちょっとしたマイナーチェンジを繰り返している選手は多い。
それは、少しでもアベレージを上げるため、もっと遠くへ飛ばすために他ならない。いつも応援している選手の見慣れた打撃フォームでも、よく見てみると、昨季からモデルチェンジしている部分が発見できるかもしれない。
(※写真は立教大時代の熊谷敬宥)
文=藤山剣(ふじやま・けん)