今季の開幕時、マスコット的にもっとも話題を集めたのは間違いなく中日のドアラだった。3月31日の開幕日に向けて、中日新聞、中日スポーツにドアラの「自虐広告」が日替わりで掲載されたのだ。
ビジュアルコンセプトは「鯉に食べられた」(3月27日付)→「星があたった」(3月28日付)→「虎に噛まれた」(3月29日付)→「燕につばまれた」(3月30日付)→「巨大な足に踏みつぶされそう」(3月31日付)というもの。そこから、「ドアラのカタキをうって」(31日のみ「ドアラをたすけて」)というコピーに落ちていく。
この手の他球団を揶揄したようなビジュアル訴求は、これまでロッテの独壇場だったが、今回、中日がドアラを使って参戦してきたわけだ。交流戦前にはパ・リーグ相手に同様の広告ネタを仕込んでくる可能性もある。引き続き注視していきたい。
昨年、球界に新たに加わったマスコットといえば、オリックスのWEB上応援キャラクター「バファローズポンタ」。本を出せばすぐにシリーズ化(『バファローズポンタのおうえん絵日記』)される人気で今季も継続採用が決まった。
4月7日、そんなバファローズポンタの「2017年・新ユニフォーム着用版ぬいぐるみ」が発売されると、オンラインショップで用意していた300個がたった7分で完売! ポンタ人気は今年も健在。いや、さらにパワーアップしている感がある。
ちなみに、開幕直前に開催されたオリックス大好き芸人によるトークイベント『オリックス・バファローズを10倍楽しく応援するトークSHOW』で、ハイヒール・モモコが登壇。今季のオリックスの見どころとして「バファローズポンタのツイッター」を紹介していた。ポンタ完売の裏には、モモコ効果があったのかもしれない。
チームの広報役が本来の生業であるはずの球団マスコット。だが今年、球団の内外で新たな「肩書き」を手に入れたマスコットは多い。
まずは阪神のマスコット・トラッキーが球団の「グッズ販促部長」に就任。春季キャンプの前後にはタイガースグッズのPRイベントに精を出し、「グッズ販促部長 トラッキー」の名刺を配りまくっていた。
西武のマスコット・レオとライナが就任したのは「埼玉特命観光大使(台湾担当部長)」。台湾からの観光客誘致を図るため、今後、レオとライナが埼玉県内の観光地について、SNS上で情報発信するという。
沖縄県那覇市で春季キャンプ中の2月23日、巨人のマスコット・ジャビットが「那覇警察署の一日署長」に就任。子どもたちと一緒に「高齢者の特殊詐欺・交通事故防止」をアピールした。
3月21日、東京・台場にあるローソンフジテレビ店の「一日店“鳥”」に就任したのがヤクルトのマスコット・つば九郎だ。
実はつば九郎、今季の年俸交渉の席に遅刻してしまい、年俸アップとはならず。その補填としてなのか、アルバイト感覚で一日店“鳥”に就任。ヤクルトの優勝に願掛け、「黄金チキン」28個の現物支給で手を打ったという。
アルバイトに勤しんでいたつば九郎。だが、しばらく新たな臨時バイトは必要なさそうだ。というのも、4月2日、競馬のG1レース「大阪杯」の予想を的中させたから。同日、神宮球場でのDeNA戦前に「きょうはG1れーす おおさかはいです」と、いつもの調子で筆談コメント。
肝心の予想については「ひじょうにむずかしいです。なのでBOXでいきます 1、4、5、7、13 しんじるしんじないは Youしだい」。
果たして大阪杯の着順は、【1着:馬番5・キタサンブラック。2着:馬番4・ステファノス。3着:馬番13・ヤマカツエース】。1着から3着までの馬番号を着順通りに当てる「3連単」を見事に的中させた。
そんな勝負師・つば九郎の独占インタビューを試みたのが一流スポーツ紙「東京スポーツ」。今季、ヤクルトが優勝した暁には、「とうすぽさんにむりょうでばくろばなしをかきます」を公約として掲げていた。つば九郎砲によるスクープ炸裂となるだろうか?
今季のここまでの球界マスコット事情を総ざらいしてみたが、最大の事件、といえば、4月20日に発売されたニンテンドー3DS用ソフト「プロ野球 ファミスタ クライマックス」。なんと、12球団のマスコットが選手として起用できるのだ。
ちなみに、マスコットはすべて投手・野手の二刀流。活用方法はプレーヤー次第だ。ファミスタ30周年記念作品、とあって、さすがの気合いの入れよう。これを機に、マスコット人気と認知がますます高まるのを期待するばかりだ。
週刊野球太郎では今年も引き続き、球界のマスコット事情を追いかけていきたい。
文=オグマナオト