強力打線を武器に開幕8連勝と圧倒的なスタートダッシュを見せた西武の勢いが落ち着いてきた。交流戦前の最後のカードでは日本ハムに3連敗を喫するなど、2位との差は縮まった。楽天こそ離された最下位となっているものの、パ・リーグは5位までのチームがいずれも勝率5割以上をマーク。セ・リーグ同様に大混戦が予想される。
ここ数年はソフトバンクの独走、あるいは日本ハムとソフトバンクのマッチレースとなっていただけに、久々の“混パ”となりそうだ。
当然、各チームとも不安要素はある。特に気がかりなのはソフトバンクだ。ここ数年は圧倒的な戦力を誇り、離脱者が出ても代わりの選手が穴埋めをして、戦力の大幅ダウンを避けてきた。しかし、今シーズンはその穴が埋まりきっていないのだ。
なかでもサファテ、岩嵜翔と試合終盤を任されていた両投手の不在が痛い。ほかにもベテランの和田毅も戦列を離れているが、和田は昨シーズンも不在の時期があり大きくは変わらない。現状は、サファテと岩嵜の穴を森唯斗、嘉弥真新也、加治屋蓮らで凌いでいるが、果たして。
同じく西武も投手陣に不安が残る。「山賊打線」で打ち勝っているものの、防御率はリーグ最下位。ロースコアの展開だと脆さが出る。また交流戦では、田口麗斗、内海哲也(ともに巨人)、石川雅規(ヤクルト)と技巧派左腕にひねられた。辻発彦監督は「パ・リーグにはあまりいないタイプ」とコメントしていたが、他の球団は左腕をぶつけることで強力打線封じの糸口を見つけるかもしれない。
日本ハムはエース・上沢直之、マルティネスと先発の軸が安定しており、中継ぎ陣も万全だ。打線も貧打と言うほどではなく、順調に見える。しかし、先発の高梨裕稔は波があり、有原航平(6月13日の試合より抑えにまわった)、加藤貴之は思うように結果を残せていない。3番手以降の先発投手陣の奮起が求められる。
オリックスは打線が鍵となりそうだ。開幕前はロメロ、マレーロ、吉田正尚、T-岡田と並ぶ打線がリーグ屈指の破壊力と見られていた。しかし、結果を残していると言えるのは吉田正ただひとりで、ほかの選手の打率も2割台前半といまひとつ。吉田一将、山本由伸、増井浩俊とリリーフ陣が安定しているだけに、得点を奪い逃げ切りパターンを作りたいところだ。
交流戦で息を吹き返してきたロッテは荻野貴司、中村奨吾、角中勝也と打線の軸が結果を残し、先発も石川歩、ボルシンガーらも好投を見せている。心配なのは、本来であればエースの働きを見せなければならない涌井秀章だ。ここまで4勝5敗で防御率は4点台。エースが復活することで、一気に抜け出すこともできるだけに奮起を期待したい。
大きく離された6位に沈み、梨田昌孝監督が辞任した楽天が蚊帳の外かというと、決してそんなことはない。むしろ、今後のパ・リーグを占うのは楽天とも言える。かつて中日を率いていた落合博満氏は2011年シーズンを振り返り、「(最下位の)横浜とやるゲームが一番イヤだった」と語っている。その真意は絶対に落とせないからだった。
今シーズンの楽天もまさに2011年の横浜のような状況だ。他の5球団が「落とせない」と力むことで勝機が生まれる可能性は十二分にある。そこでひとつずつ星を拾うことができれば、おもしろいことになるかもしれない。
こう見ると今後のパ・リーグは混戦となり、鍵を握るのが楽天となりそうだ。
※数字は2018年6月13日終了時点
文=勝田聡(かつた・さとし)