山口は柳ヶ浦高校時代に甲子園に2度出場し、2005年の高校生ドラフト1巡目で横浜に入団。ルーキーイヤーに早くも初勝利を記録し、3年目からはリリーフに転向して本領発揮。2008年から2013年までの6年間で、284試合に登板し111セーブ。2012年には防御率1.74と好成績を残した。
先発に戻った2014年からは8勝5敗、3勝6敗、11勝5敗という成績。昨季は11勝でチームの勝ち頭だっただけでなく、リーグトップの5完投。規定投球回数にはわずかに足りなかったものの、チームのクライマックスシリーズ初進出に貢献した。
一方の平良は、北山高校出身。沖縄の公立校である北山高は高校球界の強豪ではなく、甲子園の出場歴もない。しかし、平良は沖縄県大会や九州大会での好投が評価され、2013年のドラフト5位で巨人入り。3年間の在籍で、1軍登板は1度。3回2/3を投げ、4失点で敗戦投手になっている。
強豪私立校出身で甲子園出場経験もあるドラ1の山口に対して、甲子園未出場の公立校からドラフト下位入団の平良。好対照なキャリアを経た2人のプロ入り後の活躍度は、山口が大きく上回る。
山口の年俸の負担分はひとまず脇に置いて、実績だけを比較すれば、山口を迎え入れた巨人が大きく得をしたことになる。FA移籍するほどの選手だから当然と言えば当然だが。
しかし、開幕後から6月上旬までの働きで「お得」具合を判断するならどうだろうか。
5月10日の中日戦、平良は移籍後初登板となる先発マウンドに立ち、5回1失点と好投。プロ初勝利を挙げた。その後は2度先発し、2回6失点、5回4失点と打ち込まれ、いずれも敗戦投手となっている。
対する山口は、キャンプ前から肩の違和感で調整が遅れ、未だ1軍登録はされていない。
3試合に先発し1勝2敗の平良と、出場なしの山口。平良が借金1で山口はプラマイ0という見方もできなくはないが、やはり試合に出てこその野球選手。そしてなにより、推定年俸は、山口が2億円で平良が750万円。総合的に考えても、開幕約2カ月では平良の貢献度が一歩リードと見ていいだろう。
ただ、山口の肩も徐々に快方へ向かい、5月に入ってからはシート打撃やイースタン・リーグで短いイニングに登板するなど、少しずつペースアップ。6月6日の西武戦では、先発で7回114球を投げ3安打1失点。復調を大きくアピールした。
巨人が球団ワーストの大型連敗を喫するなか、6月13日からソフトバンク3連戦で1軍初登板とのニュースが流れている。このまま順調なら、巨人のユニフォームを着た山口を、1軍のマウンドで見られる日は近い。
山口が実力を発揮し、年俸分以上の結果を出していくようなら、「やはり巨人がお得だった」ということになるが、2試合連続炎上からの平良の巻き返しにも期待したいところ。
いずれにしても、どちらがお得だったかのファイナルアンサーは、シーズンが進むにしたがって明らかになっていきそうだ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)