2年連続のリーグ優勝を目指す広島。昨シーズン限りで黒田博樹が現役を引退し、先発陣の大きな補強はなし。そのため、投手陣の弱体化が予想されていた。そして迎えた開幕戦、ジョンソンが4回途中7失点ノックアウトで敗戦投手に。不安が現実になるかと思われた。
しかし、2戦目から引き分けを挟み10連勝。そのうち7勝は先発投手に勝ち星がつくなど、先発陣が奮闘。不安は杞憂に終わった。
なかでも、2年目の右腕・岡田明丈の躍進がめざましい。交流戦前で昨シーズンの4勝を超える5勝をマーク。黒田の穴を埋める働きを見せた。
また、開幕序盤はドラフト1位の加藤拓也が踏ん張り、加藤の離脱後は4年目の中村祐太がその代わりを担うなど、新鮮な投手たちがそれぞれの役割を果たしたといえる。
リリーフ陣を見るとクローザーの中崎翔太が4月上旬に登録抹消されたが、今村猛が穴を埋めた。セットアッパーのジャクソン、ブレイシアの両外国人投手や薮田和樹、中田廉も役割を果たしている。
田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也、安部友裕、エルドレッドら野手陣に目を奪われがちだが、離脱したジョンソン、引退した黒田という両エースの不在を皆で乗り切った投手陣の活躍も、リーグ首位の要因になっている。
金本知憲監督になって2年目のシーズンとなる阪神。開幕から好調をキープし、広島との上位争いを繰り広げている。野手陣では新加入の糸井嘉男、ベテランの福留孝介、鳥谷敬ら主軸が活躍。さらに、若手の中谷将大、高山俊らもある程度の結果を残し、打線は好調だ。
一方、先発投手陣を見てみると開幕投手のメッセンジャー、ブレイク候補の秋山拓巳が序盤から結果を残しているものの、藤浪晋太郎、岩貞祐太、能見篤史らは今ひとつ。そんな状況にも関わらず、上位に踏ん張っているのは安定感抜群のリリーフ陣にある。
守護神のドリス、セットアッパーのマテオに加え、昨シーズンは1軍登板のなかった桑原謙太朗が試合終盤を制圧し、勝利を収めている。なかでも桑原の活躍は目覚ましく、交流戦前の時点で3勝1敗9ホールド、防御率1.27とキャリア最高の成績を上げている。今季は「JFK」ならぬ「KMD」で優勝を狙う。
WBCで4番を張った筒香嘉智が開幕から不振。クローザーの山崎康晃も4月半ばに配置転換されるなど、苦しい立ち上がりとなったDeNA。
先発陣での大きな誤算は、開幕投手を任された石田健大の離脱だろう。ラミレス監督が、今年のキーマンとして名前を挙げた石田だったが、4月中旬に登録抹消。現在は復帰したもののローテーションに狂いが生じてしまった。
また、井納翔一は好投をするも勝ち星に恵まれず、2年目の今永昇太は昨シーズンの安定感が影を潜めている。
リリーフ陣は新外国人投手のパットン、不振から脱した山崎康、砂田毅樹らが奮闘。三上朋也、田中健二朗ら不調組の穴を埋めた。
広島、阪神を追いかけるためにも先発投手陣の復調に期待したい。
巨人は高橋由伸監督が2年目を迎えるにあたり大型補強を敢行した。投手陣では山口俊、森福允彦、吉川光夫、カミネロらが加わり、野手陣では陽岱鋼、マギー、石川慎吾が新加入。開幕前は独走を予想する評論家も少なくなかった。
しかし、広島、阪神についていくことができず下位に甘んじている。
先発投手陣では菅野智之が開幕から好投を見せ、3試合連続完封勝利。田口麗斗、マイコラスも結果を残しているものの、チームは低調な打線に足を引っ張られ、波に乗り切れていない。大竹寛、内海哲也といったベテラン組の奮起に期待したいところだ。
リリーフ陣は8回・マシソン、9回・カミネロの勝利の方程式が確立。彼らにつなぐ「7回の男」が鍵となりそうだ。
今シーズン、リリーフエースの又吉克樹が先発へ配置転換。当初は大野雄大らとともに先発ローテーションの軸としての活躍が期待されていた。
しかし、開幕投手に指名された大野が絶不調。交流戦前までに、6試合連続で勝ち星なしの3敗を喫し、中継ぎに配置転換された。さらにリリーフでもサヨナラ満塁弾を浴びるなど結果を残せず、チーム停滞の要因となってしまった。
一方で又吉は先発として安定した投球を見せチームの勝ち頭となっている。また、バルデス、鈴木翔太、ジョーダン、小笠原慎之介らに数字がついてきているのも心強い。
また、中継ぎ陣は田島慎二、岩瀬仁紀、三ツ間卓也、伊藤準規と揃う。
そこで、大野の復調はもちろんだが、最後のピースとして欲しいのは吉見一起の復活だ。ベテラン・吉見の復活とともに上位浮上を目指したい。
ベテラン・石川雅規が開幕投手を任されたことからもわかる通り、ヤクルト投手陣は若手の層が薄い。
そのなかで、エースに名乗りを挙げる小川泰弘は開幕から2連敗を喫するも、その後は4連勝。先発陣の柱として一本立ちを期待されたが、その矢先に故障で登録抹消となった。
この小川の穴を埋めたのが原樹理、星知弥のフレッシュコンビ。両投手が好投を見せたことでローテーションに定着。好投を続けるブキャナンとともにチームを引っ張ることになりそうだ。
リリーフ投手陣はクローザーの秋吉亮が今ひとつで、ルーキ、石山泰稚も不安定な投球が多い。そのなかで移籍2年目の近藤一樹は、交流戦前まで無失点投球を続けていた。近藤の火消しがなければ、黒星はさらに増えていたかもしれない。
上位浮上のためには、原樹、星といった若手陣のブレイクが鍵となりそうだ。
首位を走る広島は先発、中継ぎ、抑えのいずれも安定し、阪神は磐石な勝利の方程式がある。上位を走るチームには強みがある。両チームを追いかける4球団は投手陣のウイークポイントを改善し、追撃態勢を整えたい。
(成績は5月28日現在、交流戦直前までのもの)
文=勝田聡(かつたさとし)