部員10人、女子マネジャーを含めても13人という少人数ながら、昨秋の岩手県大会で準優勝した不来方。東北大会では初戦(2回戦)敗退に終わったが、青森の強豪・八戸学院光星に0対2と好ゲームを繰り広げた。
この快進撃の要因となったのが、練習時間の9割を打撃のレベルアップに費やすというメリハリの効いたチーム作りだ。少人数ということもあって、守備練習などはなかなか満足にできない。それならばと「ほかを捨てて打ち勝つ野球」を目指した小山健人監督の戦略が実を結んだ。
昨秋の好成績と、少人数でも工夫して練習している点が高評価を得て、今回の21世紀枠での選出となった。
初戦は大会5日目の第1試合、東海チャンピオンの静岡と対戦する。総合力では静岡優位は動かないが、エースで4番の小比類巻圭汰を中心としたまとまりのよさで、静岡ナインを慌てさせたい。
不来方ほどではないが、中村も部員16人、女子マネジャー4人という少人数のチーム。さらに中高一貫校で、グラウンドは中学の軟式野球部などと共用という不自由さ。それに加えて、中村高校がある四万十市は、過疎化もあって近隣には練習試合を行うような高校も皆無。
そんな状況ながら、昨秋の高知県大会では、2回戦で高知、準決勝で土佐、そして決勝で明徳義塾と、強豪を次々と撃破して優勝。
そういった活動実績と成績が評価されての選出となった。
40年前のセンバツ初出場時は、のちに阪急などで活躍したエースの山沖之彦ら部員12人で準優勝。高校野球版「二十四の瞳」として大きな話題となった。
初戦は大会2日目の第1試合。相手は群馬の強豪・前橋育英だ。投打の大黒柱である北原野空、前後を打つ一圓優太、中野聖大らが奮起すれば40年ぶりの甲子園での勝利も見えてくる。12人でできて16人でできないことはないだろう。
昨秋の岐阜県大会準決勝、多治見は9回裏に5点を奪ってサヨナラ勝ち。その波に乗って決勝は10対1で圧勝した。東海大会では、準々決勝で至学館に1対2と惜敗したものの、同大会準優勝の強豪私学を最後まで苦しめている。
この好成績と、狭い共用グラウンドながら、テニスボールを使うなどして工夫して練習に取り組む姿勢、さらには地元の小学生相手に野球教室を開くなど地域への貢献が評価され、今回の選出となった。
甲子園は春夏通じて初出場。大会2日目の第2試合で、初めて甲子園の土を踏むことになる。相手は兵庫の報徳学園。春夏合わせて3回の優勝を含む35回目(センバツは21回目)の出場となる名門相手に、フレッシュな多治見がどんな戦いを繰り広げるか注目したい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)