主要タイトル争いが白熱する理由は、いよいよ「超人」糸井嘉男がセ・リーグに殴り込みをかけるからだ。
通算打率.301の糸井嘉男(阪神)がセ・リーグで戦う初のシーズン。「超人」が昨季の首位打者・坂本勇人(巨人)、2年連続トリプルスリーの山田哲人(ヤクルト)、侍ジャパンの主砲にして昨季の二冠王・筒香嘉智(DeNA)らと繰り広げるタイトル争いのゆくえ。そこも気になるというワケだ。
なかでも、盗塁王争いに注目したい。過去2年は山田が手中に収めてきた。山田が防衛に成功し、セ・リーグでは赤星憲広(2001年から2005年にかけて5年連続盗塁王)以来となる3年連続最多盗塁を達成するのか? それとも、昨季、53盗塁でパ・リーグ盗塁王に輝いた糸井が阻むのか?
両者マッチレースのカギを握るのは、意外にもホームグラウンドかもしれない。
ヤクルトのホームグラウンド・神宮球場は盗塁しやすく、阪神のホームグラウンド・甲子園球場は盗塁しにくい。この傾向はデータにもはっきり表れている。直近5年間のセ・リーグ球場別の盗塁成功率は以下のとおりだ。
■2012年〜2016年 セ・リーグ球場別の盗塁成功率
東京ドーム(人工芝):73.3%
神宮球場(人工芝):72.1%
横浜スタジアム(人工芝):70.4%
ナゴヤドーム(人工芝):69.7%
甲子園球場(土):65.6%
マツダスタジアム(土):65.2%
(※交流戦でパ・リーグ走者がセ・リーグ球場で記録した盗塁は含まず)
セ・リーグには、甲子園球場のように内野走路が土になっている球場と、東京ドームのように人工芝の球場がある。
盗塁成功率が70%を超えたのが全て人工芝の球場だったのに対し、65%台という低い値は土の球場だった。もっと言えば、甲子園球場は盗塁企図数そのものも他球場と比べて最少だった。
通算381盗塁を誇った赤星憲広氏(元阪神)も自著『頭で走る盗塁論 駆け引きという名の心理戦』で盗塁しやすい球場、しにくい球場があることを指摘している。
そのなかで同氏は、天候に左右されることのない人工芝は、常に足元が硬い状態のためスピードに乗りやすい。一方、土のグラウンドは外的環境の影響を受けるため走りにくく、スタートで失敗するとリカバリーが難しいことを明かし、「もし人工芝の球場がホームグラウンドだったなら、もっと走れた」と綴っている。
人工芝の神宮球場と土の甲子園球場。この差が盗塁王争いにどんな影響を与えるのか? そして、今季のセ・リーグ盗塁王のタイトルは山田と糸井のどちらが手にするのか? もし糸井が手中に収めた場合、河野旭輝以来、NPB史上2人目のセ・パ両リーグ盗塁王となる。
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を標榜するデータマン&野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の現在地を多角的に紹介するメルマガは、まぐまぐスポーツ・アウトドア有料版ランキングでTOP10入りする支持を集めている。