熱心なプロ野球ファンでないとすれば、日本ハムの調子がすこぶる悪いことを知る由もなかったことだろう。その理由はもちろん開幕からの大谷翔平の活躍だ。
右足首の負傷で春先のWBC出場を辞退したは周知の通りだが、打者として調整を続けた大谷はなんとか開幕に間に合った。それどころか、いきなり大活躍だ。8試合目で左ふくらはぎ肉離れを起こすまで、打率.407、2本塁打。件の足首負傷の影響を感じさせない打撃を見せ、メディアも大谷をフォーカスした。
しかし、スポーツニュースなどで「大谷健在」をアピールするダイジェスト映像が流れる裏で「日本ハムは敗れていた」。
大谷が打ちまくったにも関わらず、スタートダッシュがうまくいかなかった要因は主軸の不振だろう。
WBCでは要所で殊勝打を繰り出した中田翔が打率.200、本塁打ゼロ。頼れるベテラン・田中賢介も打率.200。レアードにいたっては打率.094、4失策の大スランプに陥っている。
10試合目までフル試合出場を続ける近藤健介が打率.419と気を吐いているが、西川遥輝、中島卓也ら、昨季はしぶとさで魅せた選手たちが次々と低調なスタート。迫力を感じられない打線となっている。
昨オフ、トレードで巨人に移籍した吉川光夫の穴も埋めきれていない。大谷が投手として開幕を迎えることができないことになり、2枚の先発が失われたことになる。
ここまで中6、7日で先発ローテを回しているが、まず開幕投手の有原航平が大コケだ。開幕から2試合に先発し、0勝2敗、防御率7.90。早々と状態不明瞭な斎藤佑樹に出番が回ってくる展開になっている。
加藤貴之、上沢直之ら楽しみな選手が次々と先発マウンドに上がっているが、勝敗になると話は別だ。現状、メンドーサと高梨裕稔が好調をキープしているが、打線が好投を援護できずに2人とも1勝1敗。チームの勝利はその2勝のみである……。
そんな苦境のなか、大谷がチームから抜けた。これだけでも大きな痛手だが、今度は中田翔が右足付け根を痛めて、11日のソフトバンク戦を欠場。大事には至らなかったが、強行出場を続ければ大谷の二の舞もあり得るだろう。
さらに守護神・マーティンも11日、右ヒジの張りで登録抹消。中心選手にケガが相次いでいる。
思い出すのは2013年。前年にリーグ優勝を果たしながらも最下位に転落した年だ。昨年は「あの年が“創造”のはじまりだった」といわれたが、今年も同じ道を辿ろうとしている。
連覇か、破壊と創造か。栗山英樹監督は舵をどちらに切るのか。日本ハムの次なるフェイズを見守りたい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)