プロ野球開幕まであと約1カ月となった2月下旬になると、書店に今年度のプロ野球選手名鑑が並ぶ。この選手名鑑を購入し読むことで、新入団選手の顔と背番号を中心に、各球団の動向をチェックする野球ファンは多いだろう。そして、来るべき開幕へと思いを馳せるはずだ。そんなプロ野球選手名鑑にまつわる様々なエピソードを紹介しよう。
昔の選手名鑑を見てみると、現在では考えられないある項目に目がいくはずだ。何と自宅の住所(合宿所住まいの選手は実家の住所)が掲載されているのだ。ファンレターの送り先として出していたのかもしれないが、裏を返せば不振の時には抗議の手紙が殺到してしまう可能性もある。実際はどうだったのだろうか。なお、住所を公表しない選手は「球団気付」と表記されていた。
また、現在では「夫人と1男」などと書かれている家族構成だが、昔は名前も年齢ももちろん掲載されていた。先に自宅住所が書かれなくなり、家族の名前・年齢も2005年の個人情報保護法施行で家族構成のみとなった。いま考えると、昔は個人情報に対して大らかな時代だったと言える。
選手名鑑で欠かせないのは選手の顔写真。正面を向いて、口を真一文字に閉じる真面目な顔で、照明も暗め、というのが昔からのイメージだが、2000年代になると笑顔の写真が出てきた。さらに、MLBの顔写真のように斜めの体勢をとるというスタイルも登場した。現在では、それらを組み合わせた斜めに笑顔が主流となっている。
顔写真撮影の方法も昔とは変わっている。以前は1月下旬のキャンプ出発前に、各球団の練習グラウンドなどに出版する会社のカメラマンが集まり、合同で撮影する方法が多かった。しかし、現在はキャンプ序盤の練習前や練習の合間に、各球団のオフィシャルカメラマンが撮影。撮影データをオンラインサーバーやDVDで各社に配布する形となっている。
ちなみに昔の選手名鑑では、新入団選手や急遽移籍が決まった選手など帽子を被った写真がない場合、その球団の帽子を強引に合成するやり方が存在していた。
選手名鑑といえば監督、コーチ、選手が顔写真入りで紹介されているのが一般的だ。それが近年では詳細ではないが打撃投手、ブルペン捕手、スカウトなど球団スタッフ一覧を掲載する選手名鑑もある。「昔活躍した○○が、今はこの仕事をやっている」、「選手では大成しなかったけれど、球団の要職に就いているのか!」と、見ていると懐かしさや驚きが出てくるだろう。同時に「プロ野球の球団には、これだけのスタッフが関わっているのか」と再認識する機会でもある。
最近では選手のプロフィール、寸評だけでなく、様々なデータを掲載するものが増えてきた。どんなデータが載っていて、どのデータが載っていないか、それが各選手名鑑の特色となっている。
例えば、投手なら前年の全投球の球種割合や全アウトの傾向、打者なら得意なコースや苦手なコースをそれぞれチャート化したり、全安打の割合を掲載したりする選手名鑑もある。前年の投手成績、打撃成績だけでなく、セイバーメトリクスの主要な指標を掲載するなど、細分化されたデータにより、選手のいろいろな側面がわかるようになった。
試合を見ながら選手名鑑のデータを見て「このピッチャーとは相性が悪い」「得点圏では被打率が低いから抑えられる」「このコースの打率が低いからここを攻めれば!」と野球観戦を楽しむツールとして活用するのも面白いはずだ。
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