キャンプインとなり、いよいよ本格的な野球シーズンが到来。野球ファンにとって、贔屓チームのことだけを追っていればいい楽しい時間だろう。順位争いがないこともストレスにつながらず、精神状態も安定する。
そんな胸踊る時期ではあるが、一足、いや二足も早く、週刊野球太郎では2019年オフのFA戦線について見ていきたい。前回の投手編に続き、今回は野手編だ。
野手でもっとも注目を集めそうなのは秋山翔吾(西武)だろう。2015年にプロ野球記録となる216安打を放ち一気に全国区の選手となった、日本が誇る稀代の安打製造機だ。秋山は国内FA権を保有しているが、今年までの複数年契約を結んでおりFA市場に出てくることはなかった。
しかし、2019年オフには海外FA権を行使する可能性もある。断言はしていないが、昨秋の日米野球以降にメジャーを意識している発言は数多く見受けられた。とはいうものの、今年は西武の主将に就任。まずはリーグ2連覇に向けてチームを引っ張ることが最優先事項となる。
秋山と同じくメジャー移籍となりそうなのが菊池涼介(広島)だ。菊池が2019年シーズン中に取得するのは海外FA権ではなく国内FA権である。しかし、契約更改の席でポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を要望したことを明らかにした。国内FA権を行使して他球団への移籍をすることは考えにくいが、ポスティングでの移籍はありえるかもしれない。
球界では「打てる捕手」が不足しており、多くの球団が捕手併用制を敷いている。その人材難となっている捕手で注目を集めそうなのが會澤翼(広島)だ。會澤は石原慶幸と併用されながら徐々に出場機会を増やしてきた。昨季は規定打席には届かなかったが、打率.305(315打数96安打)、13本塁打をマーク。広島の捕手による最多本塁打記録を更新した。FA宣言をすれば、争奪戦となることは間違いない。
そして、2018年7月にオリックスからDeNAに移籍した伊藤光も国内FA権を取得する。侍ジャパンに選ばれた過去もあり、経験は十分にある。昨季の移籍後の成績は47試合で打率.195(128打数25安打)と、打撃面でものたりない結果に終わった。しかし、それを補うのが人望だ。オリックス時代は金子弌大(日本ハム)が絶大な信頼を寄せていたことは周知の事実。金子のいる日本ハムへFA移籍といった展開もありえる…かもしれない。
そのほかには3年契約を締結した中村悠平(ヤクルト)、捕手に復帰した岡島豪郎(楽天)が取得見込みとなっている。
さらにほかの選手を見ていこう。今宮健太(ソフトバンク)、安達了一(オリックス)、中島卓也(日本ハム)とレギュラー遊撃手が揃って国内FA権を取得する。今宮、安達の2人はこのオフに複数年契約を結んでおり、行使の可能性は限りなく「ゼロ」に近そう。
日本ハムは過去の事例を見ても、FA選手の引き止めを強く行うことはしない。ただ、それは後釜が育っている、もしくは育ちつつある場合だ。現時点で中島の後継者となり得るのは3選手だ。1軍帯同が続く石井一成、2軍で順調な成長を見せる平沼翔太、今年、20歳になる難波侑平が一気に抜き去る可能性もあるだろう。今季、この内の誰かが1軍で開花の兆しを見せ、中島からレギュラーを奪う実力がついたと認められれば、球団として積極的には引き止めず、中島自身もFA権行使に傾くかもしれない。
そして、地味ながらも動向が気になる存在なのが鈴木大地(ロッテ)だ。プロ入りから遊撃、二塁、三塁とポジションを転々としながらも、故障らしい故障はなく、2年目以降は2015年を除き全試合に出場中。打率3割、30本塁打、30盗塁といった目を見張る実績はないが、故障知らず、不調知らず、統率力も備え、内野のユーティリティープレーヤーとくればほしい球団は多いはず。今季はレアードの加入があり、将来的には三塁は安田尚憲に託す、という青写真は想像に難くない。人格者・鈴木大地といえども、起用法によっては納得がいかず、宣言してもおかしくなさそうだ。
また、中村晃(ソフトバンク)、銀次(楽天)ら巧打者も権利を取得する。中村は4年契約を結んでおり、残留が既定路線。今年から主将となる銀次は浅村栄斗の加入もあり、正念場を迎える。本職の二塁や一塁だけでなく外野の練習も行うという。出場機会を求めて宣言する可能性はあるかもしれない。
■2019年FA権取得見込み選手
捕手
岡島豪郎(楽天)
會澤翼(広島)
中村悠平(ヤクルト)
伊藤光(DeNA)
内野手
今宮健太(ソフトバンク)
松田宣浩(ソフトバンク)
中島卓也(日本ハム)
安達了一(オリックス)
鈴木大地(ロッテ)
銀次(楽天)
菊池涼介(広島)
大引啓次(ヤクルト)
外野手
秋山翔吾(西武)
中村晃(ソフトバンク)
福田秀平(ソフトバンク)
荻野貴司(ロッテ)
※成績は2018年シーズン終了時点のもの
文=勝田聡(かつた・さとし)