シーズン前には優勝候補に挙げられていた広島カープ。しかし9月27日現在、65勝69敗3分けの4位と低迷。勝負の位置付けであった、12連戦の初戦から3連敗を喫するなど、優勝の文字が霞んでしまった。そんなカープの低迷の原因は、どこにあるのだろうか?(記録は9月27日現在)
12球団2位のチーム防御率2.96を誇る投手陣は、他球団にとって驚異だ。先発4本柱は強力でシーズンを通して安定した投球を続けている。そんな強力投手陣を擁しながら、下位に低迷している原因が打撃陣にあることは容易に想像できることと思われる。
ただ、チーム打率.247はリーグ4位タイ、得点数482、本塁打数97はいずれもリーグ3位(本塁打は3位タイ)と、数字で見れば極端に悪いとも言い難い。この打撃成績に、強力投手陣を擁して4位と低迷しているのはなぜだろう。
それは、数字には現れない勝負弱さにあると考えられる。
今シーズン、カープは接戦をことごとく落としている。1点差負けの回数は26試合。そこに直結する数字的根拠はないが、原因として打線の中心、4番打者を担う選手がいなかった事が挙げられる。
今季カープの4番を最も多く担ったのが、新井貴浩だ。昨シーズンの4番エルドレッドを怪我で欠くなかで奮闘するも、打率.274、7本塁打、57打点では、明らかに物足りない。特に勝負所の9月で、月間打率は2割そこそこと低迷。4番に座ることもなくなってきている。
「4番不在」のカープが4位に甘んじてるいるのは、当然なのだろう。今さらかもしれないが、勝負を決められる4番打者がいれば、現在の順位に違いがあったかもしれない。
それではカープにとって、勝負を決められる4番打者とは誰だろう?
その問いに対し、多くのファンの脳裏をかすめるのは、栗原健太ではないだろうか?
栗原は、カープ不動の4番として君臨。チームの顔として活躍を続けた。2008年には、打率.332、23本塁打、103打点の好成績を残した栗原だが、現在はファームにいる。ヒジの手術の影響と極度の不振から、2014年以降、一度も一軍に上がってきていないのだ。
今シーズンは、ファームにおいても置かれている立場は厳しく、もっぱら代打のみの出場に限られている。打率.132、1本塁打、2打点という数字を見ると、栗原の勇姿を一軍で見ることは難しいかもしれない。
しかし、栗原の一打に夢を見せてもらった過去があるだけに期待をしてしまう。特に、夏場以降の栗原の活躍は目を見張るものがある。2007年から11年まで、ほぼフル出場を重ねてきた5年間の平均打率が.297に対して、8月から10月の平均打率は.323。平均の本塁打数が20.6本に対し10.2本塁打と、半数以上をこの時期に打っている。打点も85.2に対して38.2と、勝負どころでの打棒が光っていることが分かる。
球団記録の25試合連続ひと桁安打を記録するなど、勝負どころでの貧打に泣いたカープ。9月には31イニング連続無得点を喫したこともあった。カープには、栗原のように勝負どころでの一打を決められる4番打者が強くが求められている。
栗原健太、彼が再びカープの4番打者として輝く時を期待して止まない。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)