好評発売中の『別冊野球太郎2014球春号〜プロ野球呪いのハンドブック』(発行・イマジニア株式会社ナックルボールスタジアム/発売・廣済堂出版)。本書を参考に、12球団の呪いポイントと解消ポイントを考察していくこのコーナー。遂に昨年1位球団の登場です。
△2013年パ・リーグ1位:楽天の応援ポイント▽
ポスト田中は心配無用!?
楽天ファンにとって一番の心配は、「田中将大(ヤンキース)の抜けた穴をどうやって埋めるのか」という点に尽きるだろう。単純に考えて、24の貯金が無くなってしまったのだ。
しかし、心強いデータを発見した。近年、他球団でエース級の投手が渡米した球団の移籍前年と翌年のチーム防御率を比較してみると、実は極端に負の影響を受けたチームは存在しないのだ。
また、松坂大輔(現メッツ)が抜けた翌2007年の西武は涌井秀章(現ロッテ)が最多勝を獲得。川上憲伸が抜けた翌2009年の中日は吉見一起が最多勝。和田毅が抜けたソフトバンクも、翌2012年に攝津正が最多勝。ダルビッシュ有(現レンジャーズ)が抜けた日本ハムは翌2012年に吉川光夫がMVP獲得と、多くの球団で、新たなタイトルホルダーまで生まれているのだ。
この「逆ジンクス」を信じ、則本昂大の更なる躍進、そして松井裕樹のブレイクなど、新戦力の台頭に期待してみてはいかがだろうか。
相手チームの守りにプレッシャーを!
今季から「楽天Koboスタジアム宮城」(コボスタ宮城)に改名した楽天のホーム球場には不思議なデータがある。ビジターチームの1試合平均失策数がパ本拠地の中でリーグワーストなのだ。つまり、相手チームにとっては「守りにくい球場」ということになる。
このデータを選手が知っているとは限らないが、「なんかエラーが多い」、「守りにくいんだよな」という深層心理は秘めて可能性がある。そこに楽天ファンの「プレッシャー」が加われば、焦りから新たなエラーが生まれることも十分考えられる。
幸い、コボスタ宮城は鳴り物の応援が禁止の球場。ファンの声もより届くはずだ。楽天にとって力が出る、相手チームにとってはプレッシャーとなる声援を送ってみよう。
求む! ストッパー候補
昨季、楽天の試合で一番盛り上がったのは、優勝を決めた試合での「ストッパー田中」の登板ではなかっただろうか。日本シリーズ第7戦でも則本・田中の2枚エースが見事な救援リレーを演じてみせた。だが、裏を返せばそれは「ストッパー不在」だったことを意味している。
もっとも、ストッパー不在は昨季に限ったことではない。2012年に青山浩二が記録した22セーブが球団記録であり、他の年では15セーブ以上がいなかった年が4回、15セーブ以上で成功率が9割を超えたのは、2011年のラズナー(17セーブ)ただ一人なのだ。
ここまでのオープン戦では青山と福山博之が7試合ずつに投げ、2セーブずつ(21日終了時点)と、決まらない開幕投手以上に、星野仙一監督の頭を悩ませているはず。それだけに、ストッパーになった投手に期待しつつも、他には適任者はいないのか? という視点をシーズン中も持ち続けた方がいいかもしれない。
澤村、脱「ムエンゴ」なるか!?
「ムエンゴ(無援護)」とは、好投しても味方打線の援護がなく、勝ち投手になれないことを指すネット用語。このような援護無縁の投手が登板すると、ネット掲示板では「ムエンゴ」の文字が踊るという。
昨季、もっとも援護に恵まれなかったのが巨人の澤村拓一だ。12球団でただ一人、援護率(先発登板し、降板するまでのチームの得点数を9イニングあたりにしたもの)が3点台を切る「2.94」を記録した。ちなみに、昨季の巨人の平均援護率が「4.19」。つまり、普段は4点奪ってくれる強力打線が、澤村の登板時には2、3点しか奪ってくれていないのだ。
また、ここまでの数値の開きは昨季がはじめてだが、澤村は入団以降3年間、巨人の平均援護率を下回る援護率しかもらえていないのが切ない。今季の応援では、澤村登板時、澤村に声援を送る以上に、巨人打線の奮起を促すべきだろう。
今更ですが……ドームランにご用心
昨季は統一球の問題でボールの反発係数が上がったこともあり、どのチームでも一昨年より投手陣の「被本塁打」が増えた。だが、その増加率がリーグワーストだったのが巨人だった。
「ムエンゴ」同様、ネットでの認知度が高い「ドームラン」。こんな言葉が生まれるくらい、東京ドームは本塁打が出やすい球場だ。にもかかわらず、巨人投手陣にはゴロよりもフライを打たれやすい「フライボールピッチャー」が主力投手に多い。今季の東京ドームの試合、一発を浴びがちな杉内俊哉や澤村が登板したときには、より一層気合いを入れて応援してみよう。
「神宮の呪い」を払拭せよ!
昨季、危なげなくリーグ制覇した巨人。セ・リーグのどの対戦相手からも勝ち越しを演じた。だが、最下位ヤクルトの本拠地・神宮球場でのみ、2勝7敗の勝率.222と信じられない負けっぷりを見せていた(※ちなみに、東京ドームでの成績は巨人の8勝1敗)。
この「神宮の呪い」を払拭するには、選手の奮起はもちろん、ファンの声援による後押しも必要だ。本拠地・東京ドーム(水道橋)から神宮球場(信濃町)へは電車でわずか7分。ドームに行く感覚で応援に行ける球場だ。
ちなみに、毎年プロ野球ファンの注目を集める神宮球場の「生ビール半額Day」、今年は7月23日・8月1日・9月5日の3回。このうち、9月5日が巨人戦だ。また、7月21日〜8月21日・9月5日〜9月7日の試合では300発の打ち上げ花火も予定されている。ビール目当てでも、花火目当てでもいいので、今年は神宮球場での観戦数も増やしてみてはいかがだろうか。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/@oguman1977