まず、期待したいのが、2008年ドラフト1位・岩本貴裕だ。
182センチ90キロの恵まれた体格。その“恵体”から放たれる長打は、2年目の2010年に2か月で14本塁打を放ったことで実証済みだ。4年目の2012年には、約2カ月に渡って4番を務めるなど、随所で活躍を見せてきた。
しかし、短い期間での活躍はあれど、年間通しての活躍がない岩本。ファンの多くは、ポテンシャルの高さを知るだけにもどかしさを隠せない。しかも、ここ2年は短期間の活躍すらない、忘れられた存在になりつつあった。
昨シーズンのオフに、岩本は目の手術を行った。今シーズンは出遅れてしまったが7月1日に初昇格。ここまで(7月19日現在)9打数4安打と結果を残している。
例年、夏場に登場し活躍する岩本。同タイプのライバルは多いがポテンシャルでは引けを取らない。
また、「日本人の長距離砲」という存在にはロマンを掻き立てられる。そのためファンの期待は大きく、それに応えるだけの力があることも信じている。チーム屈指の長距離砲が放つ優勝へのアーチに期待したい。
続いて期待したいのは、広島一筋15年のベテラン廣瀬純だ。
廣瀬といえば、玄人好みの外野守備に一見の価値がある。一球ごとに細かく守備位置を変えながら絶妙なポジショニングを取り、最短距離で打球に向かう。肩も強く、送球も正確だ。テレビではなかなか見ることのできない細やかなプレーは、常に通を唸らせてきた。
2010年には打率.309を記録し、念願のゴールデングラブ賞を獲得。2013年には日本記録となる15打席連続出塁も果たした。守備だけでなく打撃も実績がある。ここぞというところで廣瀬が登場すれば、ファンも大いに盛り上がるのは間違いない。
昨シーズン、廣瀬はプロ入り後初めて1軍での出場機会がなかった。今シーズンも、ここまでまだ1軍に昇格はできていない。そればかりか、このまま引退してしまうのか? とまでささやかれている。
しかし、現在2軍で打率.313と数字は残している。外野の選手層は厚いが、ベテランの力が必要となる時には、実績もあり、ムードメーカとしても力を発揮する廣瀬はうってつけの存在だ。
また、廣瀬といえば応援歌がとてつもなくかっこいい事でも有名。またあのファンファーレを歌いたい。そう願うファンは多い。
最後に挙げたいのは、広島暗黒期を支えた元抑えの永川勝浩だ。
今シーズンは、豪快に足を上げる以前のフォームに戻した。ストレート、伝家の宝刀フォークともにキレを見せ、復活を期待された。
しかし、4月20日の横浜戦、自身の500試合登板を飾る試合で満塁弾を浴びるなど大炎上。それから失点を重ね、現在は2軍調整中である。
しかし、記憶に新しい2013年、広島初のCS進出の陰の立役者は永川だった。この先、優勝を意識した緊張感に満ちた試合が続くことが予想される。登板過多気味のリリーフ陣に変わりシビれる場面を任せられるのは、経験豊富な永川をおいて他にないだろう。
その他にも、長年チームを支えた梵英心なども、ここぞというときには頼りになるはずだ。
25年ぶりの悲願を目指す広島。ここで紹介した選手達が、チームのピンチに本来の力を発揮したならば、その経験と実績は、必ずや優勝への後押しになるに違いない。
かつてのヒーローたちが、優勝に貢献する場面がやってくることを大いに期待したい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)