2016年は規定投球回到達者こそいなかったが、先発陣の枚数に不足はなかった。吉見一起、大野雄大、若松駿太に加えて、ジョーダンとバルデスも残留。昨季後半には小笠原慎之介や小熊凌祐も好投を見せ、さらにはドラフトでは「完成度ナンバーワン」の評もあった右腕・柳裕也(明治大)も獲得。
昨季は全員が少しずつケガや不調で離脱する時期があったが、いわば2015年が底。2、3名の復調さえあれば、立て直しは容易と見る。
昨季は守護神選びに手間取り冴えない印象のリリーフ陣だが、蓋を開けてみれば救援防御率3.04はセ・リーグトップ。未だに「投手王国」の匂いがプンプンしている。
契約合意と伝えられている新外国人のロンドン、アラウホのどちらかが守護神にハマれば、セ界一のリリーフ陣の完成。岩瀬仁紀や浅尾拓也の復活にも期待したいが、それがなくとも期待できる。
セ・リーグ最低の500得点に終わった打線だが、「流出確実」とまで言われた平田良介と大島洋平の残留はやはり大きい。昨季はビシエドや平田の主砲勢に離脱時期があったが、万全ならば底上げは必至。8月末から4番に座った福田永将も9月に4本塁打をかっ飛ばし、風格が出てきた。ここに高橋周平あたりの覚醒が加わるとなれば十分ポジティブに考えられる。
【オリックス・バファローズ】
オープン戦、シーズン、交流戦、2軍とすべてが最下位に終わり、チーム打率、チーム防御率もリーグ最下位。さらにはチームの約半分の盗塁を稼いだ糸井嘉男が流出。忌憚なくいえばポジティブになれるわけがないオリックスだが、希望の光は助っ人に求めたい。
先発で奮闘したディクソンはともかく、昨季はほかの助っ人があまりにお粗末すぎた。コーディエ、ボグセビッグ、ミッシュ、クラーク、ブランコ……。ギリギリ残留を勝ち取ったモレルも94試合で打率.244、8本塁打。ディクソンを除いた3枠が「底値」だった。
今季も助っ人が続けざまに戦力にならない事態もありうるが、それでも昨季よりヒドい状況はあまり想像できない。キャンプから新外国人の動向に注目し、思う存分暴れてほしいところだ。
前年に2位に躍進、前評判が高かった2015年に加入し、打撃不振で批判の矢面に立たされた中島宏之。2016年も前半戦だけで3度の登録抹消があり、巨大補強の残骸と化していた。
しかし、7月30日に1軍に戻ってくると一味違った。かつてのような強い右打ちが蘇り、ヒットを量産すると、9月には5本塁打。前半戦の打率.235から打率.290にまで引き上げる怒涛の猛追を見せた。
日本球界に復帰してから2年目後半の復活といえば、福留孝介(阪神)を思い出す。不良債権扱いだった福留も今やなくてはならない存在に返り咲いた。中島もそうなってくれると信じたい。
守護神・平野佳寿の復活も大きい。31セーブを挙げただけではなく、防御率1.92、WHIP0.98と内容も充実。この流れが金子千尋や西勇輝に波及すれば、投手陣の屋台骨はしっかりとできあがる。
ケガの功名ではあるが、昨季は早々と若手の育成に着手できたオリックス。上位予想のファクターにはなりにくいが、多くの期待の若手が1軍経験を積んだこともあり、オリックスファンは意外にも明るくポジティブだ。
特に期待されているのは若月健矢だ。高卒3年目の21歳ながら、早くも正捕手格に成長。今年、若月がもう一皮剥ければ、夢はますます広がる。
主力陣も20代の選手がほとんどで伸びしろ十分。広島のように選手間での覚醒が覚醒を呼ぶ、「全員ピーク」状態も今後あり得るだろう。
何よりも福良淳一監督の続投でチーム全体がドッシリと構えたことも大きい。「どうする? どうなる?」と不安なチーム体制に怯える状況はすでに脱した。メンタル面の安定で、思い切った一発大駆けもあるのではないだろうか?
よって、中日、オリックスともにAクラスと予想したい!
文=落合初春(おちあい・もとはる)