2015年にトリプルスリーを達成したこともあって、柳田悠岐(ソフトバンク)が「すごい選手」であることは、すでに野球ファンの間に浸透しているだろう。あらためてその魅力、凄み、稀有なキャラクターを2回にわたって紐解いてみたい。
今、最も人気のあるプロ野球選手は誰か? そう聞かれると、様々な選手の名前が挙がるだろうが、ひとつ明確な数字がある。それがオールスターゲームのファン投票だ。
このファン投票において、柳田は2016年から3年連続で両リーグを通じて最多票数を獲得している。3年連続の最多得票は、イチロー(当時オリックス/6年連続1995年〜2000年)以来18年ぶり。また、今年は自身最多となる61万9150票を獲得したが、最多得票が60万票を超えたのは、山崎武司(当時楽天/2007年、109万4803票)以来11年ぶりのこと。これはもう、名実ともに当代一の人気選手と言っていい。
その人気の要因の一つが身体能力の高さだ。50メートル走5秒台の俊足で、遠投も120メートルオーバー。大学時代に球速が148キロを記録したというから、パワーアップしている今なら、150キロを超えるのでは? と思わせる。
さらに、2015年にはトリプルスリーを達成しているが、これは(ものすごくシンプルに言えば)打ちまくれば達成できる「三冠王」と違って、「盗塁」という打撃とは別ジャンルの才覚が必要。その勲章を得たことも、柳田のスペシャル感を際立たせている。
さらに柳田は、ヒーローインタビューの受け答えなどで、どこか少年ぽい天然さを醸すなど、キャラクターでも惹きつける。
小中学生時代に人気があった男子は、足が速かったり、スポーツができるのが定番。ファンは人気者の最上級レベルの雰囲気を柳田に感じているのではないだろうか。
2015年6月3日、横浜スタジアムでスコアボード直撃弾を放ち、映像表示用のLEDを破壊したことがあるように、フルスイングから芯でとらえた柳田の打球は強烈な弾道を描く。そのスイングからは、センターやライト方向だけでなく、逆方向のレフト方向にも放り込める。
また、空振りしたときでも、勢い余ってヘルメットを飛ばす姿は、往年の長嶋茂雄(元巨人)を彷彿とさせる。
故障や年齢を重ねたときのことを懸念し、その豪快過ぎるスイングに懐疑的な見方をする評論家もいる。多くは「パワーそのものがすごいのだから、そこまで“マン振り”する必要があるのか?」といった論調だ。おそらく本人の耳にもそういった声は届いているだろうが、それでもフルスイングを貫く姿勢も魅力のひとつだ。
後編ではプレーでの凄みについて、さらに迫っていきたい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)