まずは、ジャフェット・アマダーだ。NPB史上最重量135キロの巨漢。長らくメキシコでプレーし、昨年は打率.346、117打点、41本塁打の成績で二冠王を獲った右の強打者である。開幕前に発症した左手首痛からのリハビリが続いたが、18日に2軍戦復帰。早くもDeNA・砂田毅樹からホームランを放つなど、期待の長打力の片鱗をのぞかせた。
こう書くと期待感が高まるが、留意すべきは打高投低で有名なメキシカンリーグ出身者であること。同リーグ出身のソフトバンク・カニザレスは、開幕前に李大浩の穴を埋めると目されていたものの、フタを開けてみたらさっぱり。
楽天でも2011年に同リーグ打点王のテレーロが入団したが打率.153、1本塁打に終わった失敗例もあるだけに、アマダーの実力も未知数だ。
そこで8年目25歳の和製大砲候補、中川大志を推したい。今季は4月に一度、1軍昇格した中川。しかし出場機会に恵まれず、2軍調整が続いている。
そのイースタン・リーグで、中川は快音連発中なのだ。打率.378のハイアベレージは2位のロッテ・加藤翔平に5分の差をつけるダントツの首位打者。スタメン出場29試合で出塁ゼロは2試合のみとコンスタントに安打を積み重ね、四球でも数多く歩いている。三振13個に対して四球22個は、無駄なボール球を追いかけることが減り、好球必打の打撃が実践できている証拠だろう。
思えばちょうど1年前、苦境のチームを助けるべく1軍昇格して救世主的な好活躍を見せたのが中川だった。1軍登録から約1カ月100打席足らずの打数で打率3割越え、二塁打5本、本塁打5本の長打量産。巨人戦ではポレダ、マシソンが投げ込んできたいずれも152キロ速球をホームランにするなど、ヒーローインタビューに呼ばれること実に4度。合計17本の打点付き打席は、先制3、同点3、勝ち越し4、逆転1、サヨナラ1と価値あるシーンで飛び出す、あまりにも濃密な槍働きはファンの脳裏に深く焼き付いている。
アマダー、中川という右の強打者2人のバットが低迷するチームを再び上昇気流に乗せられるか。今後の活躍に注目しよう。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。