最新の「意外な交流戦4割打者」は、昨季の交流戦で打率.415を叩き出した城所龍磨(ソフトバンク)。主に守備固めや代走で起用されることが多いため、打撃で活躍したのを意外に思ったファンも多かったはずだ。
しかも2015年は度重なるケガで1試合しか出場していなかったが、昨季の交流戦で復活……いや、覚醒した。
昨季の交流戦では全18試合中15試合に出場。うち2試合は代走と代打(1打席0安打)だったので、実質13試合の打撃機会で22安打を記録。この安打数は12球団中7位だったが、打率.415は堂々の1位。さらに5本塁打(5位タイ)、6盗塁(3位)と目覚ましい成績を挙げ、ソフトバンクの勝率1位に貢献。MVPを獲得した。
この活躍を受けて、イチローが着ていた「キドコロ待機中」Tシャツになぞらえ、「キドコロ活躍中」という手製の応援グッズを掲げるファンも出現。「キドコロフィーバー」が起こった。
交流戦4割打者を調べるうえで、失礼ながら筆者が1番驚かされたのが高橋信二(日本ハム、現日本ハムコーチ)だった。2009年に、打率.411、37安打で交流戦首位打者と交流戦最多安打を獲得している。
交流戦の開幕カードとなった巨人戦では、5番打者として出場。2試合で8打数4安打を放った。しかし、続くヤクルト2連戦では8打数0安打。この時点では、4割の打率を残す活躍は予感できない。
しかし、3カード目の中日との初戦で3打数1安打と持ち直すと、梨田昌孝監督(現楽天監督)が2戦目から4番に抜擢。すると意気に感じたのか、4番のプレッシャーもなんのその。4番に座ってからの19試合で、5試合連続安打、7試合連続安打を含む32安打と大爆発。
特に最後の3試合は圧巻。4打数4安打を含む13打数10安打と「バットを振れば安打」というレベルの固め打ちを見せた。
オリックスのリードオフマンとして活躍した坂口智隆(現ヤクルト)も、2011年に打率.412で交流戦首位打者に輝いた交流戦4割打者の1人。
実績からすれば意外とはいいにくいが、坂口が175安打を記録し、自身初のタイトルとなる最多安打を獲得した年の出来事だったので、印象深い交流戦4割打者として取り上げたい。
2011年をメモリアルイヤーにした坂口は、交流戦では24試合に出場。2位のマートン(当時阪神)に9本差をつける42安打で堂々の交流戦最多安打に輝いた。
特に中盤から終盤にかけては9試合連続安打と猛ラッシュ。この9試合では4安打1回、3安打2回、2安打2回と半数の試合で固め打ちを決め、「乗ると手がつけられない」量産ぶりを見せた。
安打の内訳は42安打中9本と内野安打も多かったが、5本の二塁打、2本の三塁打は交流戦トップクラスの数字。俊足と長打を備えた理想の1番打者だったといえる。
交流戦は城所が4割を達成した年が18試合制、坂口と高橋の年が24試合制。いずれにせよ短期間のため、一度調子が上がるとそのままハイアベレージで乗り切れる利点が、4割打者誕生の背景にあるだろう。
また、普段対戦しない打者ということで、相手ベンチの情報収集と対策が遅れがちになり、打者が有利という見方もできるかもしれない。
とはいえ、4人の4割打者が生まれた2015年は別として、年に1人到達できるかどうかという割合なので価値は大きい。ぜひともその頂を目指し、交流戦後のシーズンにつなげてほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)