8月20日、札幌ドームで行われた日本ハム対ソフトバンクの首位攻防戦。ソフトバンク・柳田悠岐が2回も珍事を起こした。
初回と5回の打席で柳田が放った打球は高々と上がり、もとい飛翔し、内野上の天井のすき間に入り込む。初回はセカンドの田中賢介が、5回はサードのレアードが打球を見失わずに、天井のすき間から落下してきた打球をうまくキャッチしたが、どちらも一度天井のすき間に入り込んだとして、「二塁打」の判定が下された。
キャッチした瞬間は日本ハムファンから大声援が沸き起こったが、球審の説明に札幌ドームは「え〜っ……」と疑問が入り混じったため息。
そもそもドーム球場の天井直撃はどういう扱いになっているのだろうか?
まず全ドーム球場で統一されているのは、「プレイングフィールド上の天井」という文言だ。
プレイングフィールドとは観客席とグラウンドを分けるフェンスの内側。つまり、観客席側の天井に当たった打球は外野席の向こうでない限りは誰がどう見てもファウル。当然ファウル扱いとなる。
プレイングフィールド内はどうなるか? 基本的にインプレーで処理される。しかし、今回の柳田のケースのように天井内部に入り込んだり、ボールが落ちてこない場合はボールデッドで二塁打だ(フェアゾーンの天井に限る)。
では、天井直撃の認定本塁打はどんなときに認められるのか? これがまた細かく規定されていて複雑&難解だ。
たとえば、東京ドームでは中央上部のスピーカーに当たった場合は本塁打だった。1990年にブライアント(当時、近鉄)がぶち当てた驚愕弾で「中央スピーカー=本塁打」の認知度も高いだろう。
だが、2016年からこの天井スピーカーは撤去されている。東京ドーム生観戦では「ほほ〜、ブライアントはあそこに当てたのか」と詠嘆したファンも多いだろうが、ブライアントの栄光のシンボルが、ひっそりと消え去っていた……!
しかし、東京ドームには外野上部にスピーカーや照明などが存在。これらに当たれば本塁打だ。これに限らず、ほとんどのドーム球場が外野上部の懸垂物に当たれば本塁打というグラウンドルールになっている。
また大阪ドームも文面では分かりにくい。野球規則委員会の特別グラウンドルールいわく、
《打球がフェア地域上にある一番外側のスーパーリングに当たった場合、および中堅のフェンス上の天井にある懸垂物に当たった場合は本塁打とする》
また札幌ドームや西武ドームでは外野部分の天井に当たった場合は本塁打だ。
各球場の天井を画像検索してもイマイチ分かりにくいが、つまるところは「誰が見ても本塁打の打球は本塁打」ということだ。
今回、柳田の打球で「え〜っ」と日本ハムファンから軽いブーイングを浴びた球審もさぞ胃を痛めたことだろう。
審判団も天井ルールには頭を抱えているようで、幾度もルールの統一を求めている。
しかし、今回、二塁打判定となったのは札幌ドームの天井には柔らかい素材の吸音板が貼られており、当たると一度はスッポリと中に入ってしまうからだという。
これには栗山英樹監督もおかんむりのようで、近く「吸音板に入った場合でも落下したボールをキャッチすればアウト」というルールが追加される可能性も否めない。
爆発的パワーヒッターが増え、観客を魅了する一方で、審判団はルールと同様に複雑な心境になっているに違いない。
文=落合初春(おちあい・もとはる)